「百姓上がりの道場主に、素行不良の薬売り、訳有りの脱藩者や、喰いつめ浪人といった面々。京都での結成後の他の同志も、新規入隊者も、同様の連中で、歴とした侍は、殆どいなかった。そんな烏合の会(たまり)を、しかと動かすには『侍でない者を侍以上の者』にする必要が有った。そこで、鬼と呼ばれた土方副長は、五つの絶対の決まりを創案した。」
「侍として隊に命を懸けられない者は、侍として腹を切って死ねーこの苛烈な掟が、野良犬の群れを、牙狼(がろう)の組へと変貌させた。」
「局中法度‥それが、新撰組の牙たる秘訣。」
「ああ。だが、その牙は、同時に新撰組の命を縮める毒牙にもなった。」
「この狼の掟は、隊内に粛清の嵐を生む。多くの隊士を噛み殺し、ついには決定的な内部分裂抗争。油小路(あぶらこうじ)の変を引き起こすに至った。」
「新撰組は、御陵衛士に勝利した。しかし、後日近藤局長は、御陵衛士の残党にライフルで狙撃され、右肩に重症を負い、雌雄を決する戊辰戦争を目前にして、その剣客生命を断たれたー。要を失った新撰組は以降、転げ落ちる様に、敗北と崩壊の一途を辿る。」
「新撰組は、強くなるその過程で、何かを誤ってしまった。そうでなければ、最強の俺達が、負けるはずは決してなかったー。」
『るろうに剣心-北海道辺-』永倉新八と斎藤一の回想です。
1年に1回程、新撰組について、ふと考える時があります。
小学生の時『るろうに剣心』の斎藤一に惹かれ、中学生の時『竜馬がゆく』を読み新撰組はただの人斬り集団であると感じ、高校生の時大河ドラマ『新撰組』を観る中で新選組が人斬り集団になった理由を理解し、大学生の時『燃えよ剣』を読み男の生き様とは敗北をした後にある事を学びました。
2023年8月『ゴールデンカムイ展』を目的に、函館・五稜郭に赴きました。
「土方歳三は、この函館で死んだとされておりますよ。」
「兵どもが夢の跡。五稜郭で我々の夢は終わり、そして、また、五稜郭から、新しい夢が始まる。」
『ゴールデンカムイ』永倉新八と土方歳三の会話です。
司馬遼太郎著『燃えよ剣』の土方、2004年大河『新選組」山本耕史演じた土方、若しくは刀剣が擬人化した土方の愛刀・和泉守兼定、皆さんは、どの土方が推しでしょうか?
さらに『ゴールデンカムイ』『るろうに剣心』『終末のワルキューレ』『青のミブロ』等、新撰組は、現代を生きる私達の前に現れ、その生き様を魅せてくれるとともに、私達に語り掛けてくれます。
侍でない者を侍以上の者にする為に、土方が作った局中法度。
‥芹沢一派の暗殺、山南敬助の切腹、そして、油小路の変‥
鉄の掟は、野良犬の集団を、狼の群れへと変貌させるとともに、自らに毒を刺すものにもなっていきます。
私には、局中法度が、現代の結婚制度のようにも、感じてしまいます。
結婚は、問題が生じた時に、お互いに問題と向き合う事が出来る2人であれば、ポジティブなものになりますが、そうでない場合、殆どのケースがネガティブなものとして働きます。
結婚生活が不幸になる人達は、努力をしないと上手くいかないのは、2人の関係そのものに深刻な欠陥がある為であると思っています。
夫婦関係を維持していく為には、絶えず、軌道修正を加えていく努力が欠かせません。
結婚したら幸せになるはずはなく、結婚はゴールではなく、スタートなのです。
☆柔軟マインドセット:物事は変化可能
☆硬直マインドセット:物事は固定的
マインドセットとは、個人の行動や態度を決定する、物事の捉え方や信念を言います。
アメリカの心理学者、キャロル・ドゥエックは、人々には①柔軟マインドセットを持つ人と②硬直マインドセットを持つ人の、2種類が存在すると提唱しています。
①柔軟マインドセットを持つ人は、難しい課題が生じた時に、課題を受け入れます。
②硬直マインドセットを持つ人は、難しい課題が生じた時に、課題を避けます。
①柔軟マインドセットを持つ人は、困難や障害に衝突した時、逆境にも耐えます。
②硬直マインドセットを持つ人は、困難や障害に衝突した時、容易に諦めます。
①柔軟マインドセットを持つ人は、努力は克服への過程であると捉えます。
②硬直マインドセットを持つ人は、努力は実を結ばず、無駄であると捉えます。
②硬直マインドセットを持つ人の多くが、夫婦は、全く同じ考えをするものであり、言わなくても通じていると、思っています。
おかしな話に聞こえますが、特に、高齢の男性の多くが、このようなマインドセットを持っているのではないでしょうか?
意見が全く同じであれば、わざわざ、コミュニケーションを重ねる必要なんてありません。
しかし、御存知のように、そんな事はあるはずがありません。
夫婦に結婚生活に対する考え方を話し合って貰う実験をした所、②硬直マインドセットを持つ人は、結婚生活に対する自分とパートナーとの考え方に少しでも違いがあると、動揺したり、機嫌が悪くなったりしたという結果が出ています。
どのような夫婦においても、2人を結びつけようとする力とともに、2人を引き裂こうとする力が働き、それは常に拮抗した状態にあります。
結び付けようとする力は、互いがコミュニケーションを重ね、軌道修正していく事でしか働きません。
新撰組は、現代を生きる私達に生きるヒントを、多く与えてくれます。
1869年、土方歳三は、函館戦争にて、戦死したとされています。
しかし、土方の遺体が発見される事はありませんでした。
信長然り、真の英雄は、その生死を明らかにしない事で、彼らの物語を、後に生きる私達に、自由に描かせてくれます。
土方歳三も、新撰組も、まだ生きています。
「私は、函館で死ねなかったことを負い目になどしていない‥役目があるから生き残ったのだ。まだまだ走れる。そうだろう?ガムシン。」
『ゴールデンカムイ』土方歳三の言葉です。