「春は夜桜。夏には星。秋には満月。冬には雪。それで十分酒は美味い。それでも不味いんなら、それは自分自身の何かが病んでいる証拠だ。」
『るろうに剣心』比古清十郎の言葉です。
二十四節季において、8月23日~9月7日までを「処暑(しょしょ)」と呼びます。
「処暑」の「処」という感じは「来て止まる」という意味です。
つまり「処暑」とは、ようやく暑さが収まってくる時期です。
秋の虫が鳴き始め、朝夕には涼しい風が吹き、夏と秋が行き交う時期です。
「秋がくる時って、なんかワクワクするよね?」
『氷の城壁』ヨータの言葉です。
「処暑」は、夏をつかさどる女神である「筒姫(つつひめ)」に別れを告げ、訪れる秋にワクワクする時期です。
とはいえ、現代の「処暑」の時期は、いまだに猛暑が続きますが‥。
「処暑」の旬の食材は、①秋刀魚(さんま)②葡萄(ぶどう)③さつまいもです。
①秋を告げる代表的な魚である「秋刀魚」。
「秋刀魚」は「DHA」「EPA」等の「オメガ3脂肪酸」を多く含んでおり、動脈硬化予防や脳を正常に保つ為に、お勧めの食材です。
日本の漁業の代表格の1つである「秋刀魚」ですが、実は江戸時代には、殆ど知られていない魚でした。
その為「落語」の噺にも殆ど登場しませんし、松尾芭蕉の歌にもありません。
実は「秋刀魚」漁業が、本格化したのは、戦後からです。
夜間に船の集魚灯を使うサンマ棒受網という漁法が開発され、戦後「秋刀魚」の漁獲量は、急激に増えました。
1958年には600,000トンもあった漁獲量ですが、現在に至るまで漁獲量は減り続け、2023年には24,000トンにまで減少しています。
その影響もあり、1992年には1匹50円程度の値段であったのが、2023年には1匹150円と、3倍もの値段になっています。
②猛暑が続き、食欲が低下する中、お勧めの食材が「葡萄」です。
身体に怠さを感じる要因には、エネルギー不足の場合が多いです。
「ブドウ糖」という言葉があるように「葡萄」は、エネルギー補給に、最適です。
「葡萄」の栄養分としては「ポリフェノール」が挙げられます。
ワインを適量飲む事は、健康に良いと聞いた事があると思います。
これは、ワインに含まれる「葡萄」の皮の部分に、強い抗酸化作用が含まれている為です。
「巨峰」のような黒っぽい皮には「アントシアニン」という「ポリフェノール」が含まれており、これは目の健康に効果的です。
「葡萄」の歴史は、紀元前4,000~3,000年まで遡ります。
日本に伝わったのは、奈良時代です。
「葡萄」生産量日本1位である山梨県で栽培される「甲州葡萄」は、鎌倉時代初期には、栽培されていました。
③ホクホクした食感と、甘みが美味である「さつまいも」は、おかずからスイーツまで、様々な料理に活躍します。
「さつまいも」は、イモ類の中で、最も「食物繊維」が多く含まれています。
腸内環境を整え、生活習慣病予防にも、効果的な食材です。
さらに、美肌に欠かせない「ビタミンC」「ビタミンB1」「ビタミンB2」も豊富です。
「さつまいも」は、江戸時代初期の1600年に、琉球(現在の沖縄)から、薩摩(現在の鹿児島県)に伝わりました。
薩摩に伝わった為「さつまいも」という名前が付きました。
栄養摂取のほとんどを米に頼っていた江戸時代には、米が凶作となると、多くの国民が飢えにより、亡くなっていました。
そこで、8代将軍徳川吉宗は「さつまいも」を日本に普及させます。
荒れた土地でも育つ「さつまいも」は、江戸時代から、日本人を飢えから救ってきました。
食事が、美味しくなる重要な要素は、2つです。
1つは、空腹である事。
もう1つは、旬の食材を味わう事。
旬の食材を味わい、心と身体に栄養を補給して、今日も人生を乗り切っていきましょう。