「春は夜桜。夏には星。秋には満月。冬には雪。それで十分酒は美味い。それでも不味いんなら、それは自分自身の何かが病んでいる証拠だ。」
『るろうに剣心』比古清十郎の言葉です。
二十四節季において、9月7日~9月22日までを「白露(はくろ)」と呼びます。
「白露」の名は、草木に降りた霧が、光の反射で白く輝く様子に由来しています。
日中の暑さも少しずつ和らぎ、時折、涼しい風が吹いて、草の穂先に「白」い「霧」が結ばれる季節。それが「白露」です。
「時に残月、光冷ややかに、白露は地に滋く。」
教科書で見た事がある方も多い『文豪ストレイドッグス』の主役でもある中島敦『山月記』の一説です。
9月9日は「重陽の節句」です。
中国において、奇数は縁起の良い「陽」の日とされ、奇数が重なる日は「祝いの日」とされてきました。
「重陽の節句」は、別名「菊の節句」とも呼ばれます。
菊は「仙境に咲く霊薬」として、邪気を払い長寿の効能があると信じられていました。
中国では、小高い山に登り、菊の花を浸した「菊酒」を飲んで、健康や長治を祝う風習があり「菊の節句」と表現されるようになっていきました。
この風習は、奈良時代に日本に伝わり、平安時代には「重陽の節句」として、宮中行事となりました。
「白露」の旬の食材は、①梨②南瓜(かぼちゃ)③里芋です。
①8月下旬から、旬を迎える梨には、潤いを生むのみならず、渇きを癒し、身体に溜まる余分な熱を取りつつ、咳を鎮める力があります。
「白露」の季節から、さらに、秋が深まる頃まで、長く食べたい食材の1つです。
梨の名の由来は、梨の中身が白い事から「なかしろ」略して「なし」になった説や、梨は風があると実らない事から「風なし」略して「なし」になった等、諸説あります。
また「梨」という漢字は、女の子の名前に用いられる事の多い漢字の1つです。
「梨」を子どもの名前に入れる親には「可愛らしく、健康に育ってほしい」「愛情豊かな人になってほしい」等の願いが込められています。
さらに「梨園(りえん)」という言葉があるように、分かや芸術に親しむ人になってほしいという願いも込められています。
「朱音は、予定日より早く産まれたの。徹は、地方で仕事でさ、病院に着いたのは、あんたが産まれた次の日の夕方かな。」
「おぎゃあ、おぎゃあ。」
「そう。右腕で頭を支えるの。」
「なぁ‥真幸、この子の名前、朱音ってのはどうかな?」
「朱に染まる空を見て、思いついたって。あと朱って色は、魔除けとか、長寿の意味もあるんだと。そういう意味も込めてるってさ。」
「色々考えてんだね。」
「当たり前でしょ。テキトーに、子どもの名前つける親なんていないよ。」
『あかね噺』朱音の母の言葉と、母と父の会話、そして、母と朱音の会話です。
②南瓜の原産地は、アメリカ大陸です。
メキシコの洞窟で、紀元前数千年前の地層から、南瓜の種が見つかっており、南瓜と人の付き合いは、とても長い物語となります。
コロンブスにより、ヨーロッパに持ち帰られる事で、世界中に拡がり、日本には織田信長が台頭し始めた16世紀中期、ポルトガル人により、九州に伝えられました。
南瓜には「炭水化物(糖質と食物繊維)」「β-カロテン」「ビタミンC」「ビタミンE」等が、含まれています。
特に、南瓜に多く含まれる栄養素は「β-カロテン」です。
「β-カロテン」には、身体の錆(さび)とされる活性酸素の発生を抑える抗酸化作用の働きがあります。
「β-カロテン」は、身体の中で「ビタミンA」に変化します。
「ビタミンA」は、皮膚や粘膜の免疫力を、高める効果があります。
秋の風物詩でもある南瓜を食べる事で、健康的な見た目を作っていきましょう。
③里芋は、水分が多く、芋類の中では、低カロリーの食材です。
里芋には、「カリウム」が多く含まれ、浮腫みの原因となる余分な「ナトリウム」を排出する働きがあります。
さらに、独特のぬめり成分は、胃の粘膜を保護しながら、腸内環境を整える働きがあります。
「カリウム」たっぷりの里芋と、身体を温める効果のある生姜を入れた味噌汁等は、浮腫み対策に、ぴったりの品です。
胃を少しずつ温めてくれる為、まだまだ続く暑さや昼夜の寒暖の差等により、食欲が低下している方に、お勧めです。
食事が、美味しくなる重要な要素は、2つです。
1つは、空腹である事。
もう1つは、旬の食材を味わう事。
旬の食材を味わい、心と身体に栄養を補給して、今日も人生を乗り切っていきましょう。