時代を超える楠木正成

 楠木正成ほど、様々な時代に利用された人物はいないのではないでしょうか。
 正成といえば、後醍醐天皇を助け鎌倉幕府を打倒し、建武の新政の立役者となりました。
 しかし、足利尊氏の反乱に相対し、圧倒的劣勢の中負けを覚悟しながらも戦い、湊川の戦いにて尊氏軍に敗れ自害します。
その時に言った言葉が「七生報国」です。七度生まれ変わっても国のために戦うという意味です。
 この言葉や負けを覚悟するも天皇のために戦う正成の姿が幕末、太平洋戦争にて利用されます。
 幕末においては長州、太平洋戦争においては特攻隊にて利用されました。
 合理的に考えると正解とはいえない解を出しても長州藩士は泣きながら、軍幹部は大声で「湊川を思い出せ。」と精神論を振り回しました。
 すると、合理的ではない精神論が採用され、勝利にはほど遠い戦いに挑み、何百・何千人もの人が死んでいきました。
 幕末、太平洋戦争と時代を超える存在となった正成、しかし後の時代が映した正成の姿は一部分でしかありません。
 正成は戦略に秀でた武将でした。後の時代に映されない姿にこそ、正成の真の姿があります。