「え?ケーキ?」
「うん…一回も作ったことないんだけど…。人が食べて美味しいって思ってもらえるやつ。そういうものってやっぱり…その…上手い人じゃないと作れないのかなぁ…。」
「…吉川さん俺は別に、ケーキの材料持って産まれてきたわけじゃないよ。最初はみんなゼロから始めるから。作ってみて失敗したら、原因を考えてやり直そ。」
「…うん。」
『ホリミヤ』宮村と吉川の会話です。
飛行機が、飛行中予定されたルートを飛んでいるのは、飛行時間の何%だと思いますか?
正解は、0%です。
飛行機の窓際の席に座って、翼のふちのあたりを見ていると補助翼が、しきりに動いているのがわかります。
補助翼の役割は、飛行ルートを絶えず修正する事にあります。
自動操縦装置は、毎秒何回も予定位置と現在位置とのズレを感知し、舵の役目を果たす翼に修正指令を出しています。
同じ事は、私達の人生にもあてはまります。
何か新しい事にチャレンジした際に、初めから計画通りに進む事等、ありません。
チャレンジをする人は勿論、そのチャレンジに参加したり、関わったりする人も、このような理解をする事が大切です。
私は、2022年から講師や講演の依頼を引き受けるようにしたり、地域包括支援センターや基幹相談支援センター等に新しい取り組みの提案をしたりしています。
しかし、新しい提案をしても、多くの場合、その提案の一部の要素を切り取られ批判をされたり、「これまでやってきてないから」等という理由から提案が現実に動き出す事はありません。
正直、準備をして提案をした事が批判をされたり、現状維持バイアスのみで動き出す事が出来ない度に、夜もその事が頭に過ぎり、中々寝付けなくなる日もあります。
一概に年齢で判断する事は出来ませんがケアマネの平均年齢が55歳という背景から新しい価値観を取り入れる事が難しい事からなのか、個人の感想や経験のみで仕事をしている人が多いという背景からなのか、他の業界の勉強をしたり他の業界の人と交流を持つ事がないという流動性の低い業界という背景からなのか、原因は多々あると思います。
しかし、これでは、現実に課題を感じ、変えようという能力と行動力のある若い人程、嫌気をさし、離れていってしまいます。
少しでも読書をしたり、他の業界の勉強をしたり、他の業界の人と触れ合う機会があれば「現代は正解が次々を変わるから、100%の準備をしていては何も出来ない。70%準備が出来たらあとはやりながら軌道修正していく」というモデルが、成功を掴んでいる事が理解出来るはずです。
飛行機も、人生も、重要なのはスタートではなく、修正技術の方です。
自然は、その事を10億年も前から知っています。
細胞分裂の際、私達の身体内では、遺伝物質の複製エラーが度々生じています。
その為、どの細胞にも、こうした複製エラーを後々に修正する為の分子が内包されています。
このようなDNA修復の技術がなければ、私達は癌が出来てから、ほんの数時間で死んでしまいます。
誰かと5分間でも、パートナーになって経験のある人であれば理解出来るはずです。
常に微調整や修正を繰り返さなければ、パートナー関係は上手くいきません。
どんな関係においても、大切なのは、スタートではなく、微調整や修正なのです。
人が何かチャレンジをしている姿を見て、批判をしたり、否定をしたりする事は、簡単ですし、誰にでも出来ます。
しかし、チャレンジしている人を、批判や否定だけで片付けないで貰いたいです。
周囲の人から見れば、その時点ではチャレンジしている人の姿は、不十分かもしれません。
ただ、大切なのは、スタートではなく、軌道修正の方です。
チャレンジを繰り返しその度に軌道修正を繰り返した人の10年後と、批判や否定だけをしてきた人の10年後。
どちらの10年後が、より良いものになっているかは誰の目にも明白なはずです。
そして、そのような人に私のメッセージが届く事を願うとともに、そのような人と仕事をしていきたいと願っています。