「必要な時にそこにいてくれたという事実は、ただそれだけのことで、何にも増してありがたいものだ。」
『化物語』戦場ヶ原ひたぎの父の言葉です。
イギリスの精神科医ボウルビィは、社会集団における人間関係は、内的ワーキングモデルに照らして展開されると考えました。
内的ワーキングモデルとは、他者は信頼出来るものであり、自分は大切にされる価値のある人間であると確信出来る事を言います。
養育者、特に母親との相互作用により、愛着が形成されます。
このような確信を持てた子どもは、成長後も良好な人間関係を築いている可能性が高いとされています。
さらに、ボウルビィは、養育者が赤ちゃんの要求を適切に判断する能力は、健全な愛着形成の為に重要な要因であると主張しています。
アメリカの心理学者エインズワースは、子どもは、養育者との愛着関係により育まれる安全基地を拠り所にして、やがて外の世界を探索出来るようになると唱えました。
エインズワースは、ストレンジシチュエーション法を用いて、愛着形成の分析を行いました。
ストレンジシチュエーション法とは、子どもと母親を短時間分離し、再開させた時の子どもの反応を分析するという方法です。
その結果、子どもの反応には以下の4つのパターンが観察されました。
A型(回避型):離れていた母親と再会しても、そっけない態度で母親を避けようとする
B型(安定型):母親から離れる時は嫌がっても、再開した時には喜ぶ
C型(量価型):離れていた母親と再会すると、叩く等の激しい反応を示す
D型(混乱型):離れていた母親と再会した事で戸惑う等、混乱した状態を示す
エインズワースの主張を逆説的に捉えると、幼少期に親との間で愛着関係を適切に築く事が出来ず、親が安全基地になる事が出来なかった子どもは、大人になっても親元を離れる事が出来ず、外の世界を探索する事も出来ないという事になります。
問題を抱えている様々な人や家族の根本を辿ると、そこに原因がある事が多いのではないでしょうか。
子どもは、いつか親の元を離れていきます。
その時に、親が安全基地となっている事で、子どもは安心して、外の世界に旅立つ事が出来ます。