波は衝突すると、重なり合った後、元の波に戻る

 

 「‥俺は、俺は良いトス上げてます。もっと決めて下さい。」

 

 「‥ーす」「前から思ってたけど、王様ってなんでダメなの?横暴だからだっけ?自己チューだから?でも、どっちみち影山が何言っても、納得しなかったら、おれは言う事聞かない。」

 「俺は内容がどうあれ、言い方がムカついたら聞かない。」

 「左に同じ。」

 「とか言いつつ田中は、自分に言われた事は多分聞くよな。仲間への礼儀に厳しいだけで。」

 「まぁな。」

 「まぁ俺は、優しく言ってもらいたくはある。」

 

 「だから、お前が王様かどうかは、あんまり関係無い。つーか王様ってフツーにかっけえじゃんかよ。」

 「‥スパイカーが打ちやすい以上に最高のトスは無い。それは確かにコミュニケーションで探っていくもの。でも、ケンカしないって事じゃねえと思うぞ。」

 『ハイキュー』影山と日向、そして烏野メンバーとコーチ鵜飼の言葉です。

 

 

 2つの波が異なる方向からやってきて、衝突したらどうなるでしょうか?

 物と物の衝突であれば、ぶつかりはじけ飛んだり、壊れたりしてしまいます。

 しかし、海にて生じる波は、2つの波が異なる方向から進んできて、衝突をしても、重なり合った後、それぞれが元の波に戻ります。

 

 2つの波は、衝突した瞬間は、完全に重なり合い、波の高さは2つの波が合わさった高さになります。

 しかし、衝突した後も、元の波は生きているのです。

 衝突後、2つの波はすれ違い、またそれぞれが元の高さのまま独立した波として存在し続けます。

 波は、衝突の前後で独立性を保ち、他の波の影響を受けないのです。

 物体の衝突と、波の衝突は大きく異なるのです。

 

 人間関係においても、必ず衝突は生じます。

 衝突自体を避けたり、衝突を悪い事のように認識している人が多いですが、衝突自体は悪い事ではありません。

 むしろ、生育環境も、性格も、価値観も異なる人同士が関係を構築していく場合、衝突をしない事の方が不自然です。

 大切なのは、衝突後の対応です。

 物と物との衝突のように壊れてしまっては、その後の関係性を維持していく事は、困難になります。

 波のように、衝突をしても、壊れる事なく、その後もそれぞれが独立性を保つ事が大切です。

 

 影山の言葉にも、影山の存在を拒絶する事なく、影山を受け止め、それぞれが自分の意見を影山に伝える。

 この経験を得て、影山自身も「おりこうさん」を卒業し、急速に進化していきます。

 波のような関係性は、人の成長を促してくれます。