漱石の苦悩

 「智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とにかく人の世は住みにくい。」
 夏目漱石の代表作『草枕』の冒頭文です。
 『吾輩は猫である』同様、漱石の文章はとてもきれいであり、時代に左右されない不変性があります。
 漱石は、20代で国費にてイギリス留学をします。仕事は、英訳です。
 しかし、漱石はイギリスに着き、驚愕します。
イギリス人が話す英語も聞き取れない上、自身の英語は全く通じませんでした。
 漱石は、鬱状態となり、政府から与えられた課題もやらず、自室に閉じこもります。
 漱石がイギリス留学で感じたのは、「英文学というこの道は行き止まりである。」ということであったのではないでしょうか。
帰国後、漱石は英文学から離れ、次々と代表作を発表していきます。
 イギリスでの苦い経験がなければ、明治を代表する偉大な作家漱石は生まれなかったかもしれません。