為せば成る為さねば成らぬ何事も、成らぬは人の為さぬなりけり

 江戸時代当初、上杉家は謙信が残した遺産により、現在の価格にして150億円の資産がありました。

 しかし、江戸幕府による参勤交代や戦がなくなることによる収益の減少等により、多くの藩は財政が厳しくなり、家臣の数を減少させる等して何とか財政維持の為に取り組みます。

 そのような中、上杉家では5,000人いた家臣を減らすことはしませんでした。当然、その家臣への給与等は、藩で生活をする人達の年貢等により、支払われていきます。

 一見すると、美談のように思われる政策も、藩というマクロな視点でみると美談ではなく、誤った政治判断と捉えることが出来ます。

 その証拠に江戸時代当初は13万人いた米沢藩の人口も、10万人以下に減少していきます。

 また、自分達は名門の武家であるという見栄が、上杉家を苦しめます。参勤交代は豪勢に実施し、江戸での住まいにも贅沢を尽くしていました。

 150億円あった資産はあっとういう間に底をつき、いつのまにか160億円の負債を抱えていました。

 その窮地を救ったのが上杉鷹山です。17歳で9代目上杉藩主となった鷹山は、上杉家の生まれではありません。

 それもあり、誇りばかり高い上杉家家臣は、鷹山の財政改革を事ある事に妨害していきます。

 鷹山は、仕事もせずにいる上杉家家臣を土木事業や農業、林業等をするように命じます。

 ここでも、謙信時代からの家臣である格式の高い者程「格式を壊す。」と言い、反対をしました。

 人の身体には、恒常性という機能が働いています。恒常性により、人の体温は一定に保たれ、血液等も一定量が身体中を巡るようになっています。

 つまり、人は余程意識をしない限り、現状を維持しようとする生物です。

 米沢藩や上杉家家臣の思考は、まさに日本企業そのもののように映ります。80年代・90年代、日本企業は世界を代表する企業が多くありました。しかし、ソニーが携帯電話事業に取り組まなかったことに代表されるように、日本企業は現状維持を繰り返してきました。その結果、現在日本において、世界を代表する企業はなくなってしまいました。

 時代は変わっているにも関わらず、自分達が良かった時代のことばかり主張し、変わろうとしないという思考は、多くの日本人に見られる傾向です。

 奇しくもコロナウイルスにより、働き方は大きく変化をしています。それでも、「ZOOMは出来ない。」「直接会うのが大事。」「電話には出ろ。」「(不必要であると思われる)書類を決まりだからと要求をしてくる。」等、前時代のような主張をしてくる人達が一定数存在します。

 米沢藩を負債地獄から救ったのは、現状維持を主張した家臣ではなく、現状維持を変えた鷹山でした。

 過去の良かった時代に捉われることは、破滅の道に進むことであることを、上杉家から学ぶことが出来ます。