「…ロジャー…ガープ…センゴク…あの頃の海を知る者は、もうずいぶん少なくなった。」
「22年たった…。当然だ‥。」
『ONEPIECE』白ひげと赤髪の会話です。
ジョルジーニョが去り、ハムシクが去り、アランが去り、そして今年はインシーニェも、メルテンスも、クリバリもナポリを去りました。
2010年代後半、ヨーロッパ中を魅了したサッリボールを体現する選手は、現在のナポリには、ほとんどいなくなりました。
近年3度目の顔合わせとなったチャンピオンズ・リヴァプール戦、多くの人の予想を覆し、ナポリは昨シーズンシティとともに、最も完成度の高いチーム相手に快勝しました。
現在のナポリには、サッリボールの時のような美しさは、ありません。
それでも、ボールを繋ぐというサッリボールのDNAは、ナポリの中に深く刻み込まれています。
誰が相手でも、むやみに蹴る事はせずに、キーパーから繋いでいく。
リスクを逃れた後のチャンスを作る為に。
フットボールは、生き物です。
1度として同じ試合もなければ、1度として同じチームもありません。
それでも、長年フットボールを観てきたものだけが、現在のチームに過去のチームのDNAが観える瞬間があります。
これこそ、フットボールの奥深さであり、美しさです。
ナポリの3点目、新加入のクワラツヘリアは1度ボールを失うものの、再びボールを奪い返し、自らのリズムのままラストパスを送りました。
フットボールにおいても、仕事においても、人生においても、1度ボールを奪われたとしても、もう1度奪い返せばいいのです。
そして、そのラストパスに反応し、得点を決めたのも新加入のシメオネでした。
得点後シメオネは、現代フットボールでは珍しい位感動し、涙を流すかの程、喜んでいました。
昨シーズン彼女の勧めで、試合前に瞑想を始めた事で、復活を遂げたと自ら公言しているシメオネ。
私は、真っすぐで不器用で感情を爆発させ、得点を取る事しか出来ない現代絶滅危惧種であるストライカーが好きです。
しかし、翌日録画していたヨーロッパリーグを観たら、シメオネ以上に感情を爆発させてピッチに君臨している男がいました。
チャンピオンズの出場を熱望し、ビッグクラブへの移籍を懇願するも、どのクラブにも移籍する事が叶わなかったロナウドです。
その騒動の影響もあり、オールドトラッフォードのファンはロナウドに冷たい反応を見せるのかと思っていましたが、ロナウドの感情を爆発させる姿にファンも影響され、誰よりも声援を受けていたのはロナウドでした。
正直守備をせず、適切なポジショニングが出来ず、試合の呼吸を感知する能力に欠けるロナウドは、シメオネ以上に絶滅危惧種です。
それでも、その覇気は、そのマイナスポイントを上回るものがあります。
19歳でEURO初出場し、PKを与えてしまうものの、自らゴールを決め、決勝で敗れ涙した、あの頃と変わらない彼の姿からはフットボール以上のものを感じる事が出来ます。
戦い方は、1つではありません。
もちろん、自らの価値観をアップデートさせる事は必須ですが、それをしたのであれば、自らの戦い方を時代に迎合させる必要はありません。
周りの意見等、気にする必要はありません。
自分の戦い方で、戦えばいいのです。
ボールを奪われたら、奪い返せばいいのです。