①報酬は12セントで、5分後にタスクの選択権が消える
②報酬は16セントで、50分後にタスクの選択権が消える
研究チームは、203人の男女に「単純な文字列を入力して下さい」と指示し、タスクの選択肢を上記の2種類提示しました。
どちらを選択すべきかは、明白でしょう。
時間の余裕がある上に、4セント余分に貰えるのだから、②を選択した方が確実にお得です。
しかし、結果は意外なものでした。
多くの人は、5分のタイムリミットに強く反応し、もうすぐ期限が切れるという理由のみで、本来貰えたはずの報酬の25%に相当する金額を放棄し、①を選択したのです。
研究チームは、この現象を単純緊急性効果と呼んでいます。
時間制限があるだけで「このタスクは重要であるに違いない」と判断してしまう心理の事で「もっと大事な事がある」と頭ではわかっていても、私達の意識は、緊急のタスクに向かってしまいます。
これは、どの国の人にも見られる傾向です。
多くの人が健康や家族といった人生において最も大切な事を犠牲にし、単に時間が限られているだけの作業に、意識を向けています。
しかし、上記の実験においても、単純緊急性効果に惑わされる事なく、重要なタスクを選択した人もいました。
そのような人は、どのような人だと思いますか?
答えは、人生で大事な事が明確だった人です。
「報酬で、子どもにプレゼントが買える」「報酬を貰ったら、そのお金も足して恋人とディナーに出掛けよう」「報酬で、参考書を買おう」等、報酬を自分の人生と結び付ける事が出来た人は、単純緊急性効果の罠に惑わされず、理性的な判断が出来ました。
世の中には、多くの時間術が溢れています。
しかし、最新の研究では、どの時間術も、仕事の生産性を上げる事に繋がっていない事がわかっています。
ただ、上記の実験のように、時間を自分でコントロールしているという意識は、幸福度を高めてくれます。
時間術は、仕事の生産性を上げる為ではなく、人生の幸福度を上げる為に使うが、科学的に正しい時間術の使い方です。