私の中のゲーテ

 

 

 「人は、可能性を消化して、何者かになる。故に、夢見る間は、誰でも大口をたたくものです。」

 「今回の敗北は、確かに予想通りでしたが、彼に今もっとも必要なものを与えてくれます。」

 

 「挫折を。転んだことのない人間に、現実など見えはしませんよ。」

 

ジャンケットバンク】第127話 やっぱり銀行員パートやべーーーのよ【ネタバレ】 - マンガを読む!

 

  『ジャンケットバンク』宇佐美の言葉です。

 

 

 

  ♦絶望することができない者は、生きるに値しない…

  ゲーテ著『詩 格言風に』の一説です。

 

 

 東京都北区西ヶ原に『ゲーテの小怪』という道があります。

 北区とゲーテに所縁はないようですが、この通り沿いに「ゲーテ記念館」がある事から、名付けられたようです。

 

 

 

 ゲーテは、25歳の時に『若きウェルテルの悩み』を発表し、若くして著名な作家になりました。

 生涯に渡り、精力的に創作を続け、大作『ファウスト』を完成させた直後、82歳で亡くなります。

 『ファウスト』は、ゲーテ死後200年以上経った現代においても、読み継がれている名作です。

 

 『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるが、戦地に召集された時『ゲーテとの対話』を持参した事も、有名なエピソードです。

 水木しげるに限らず、ゲーテは、苦しい時に、読まれる傾向があります。

 第二次世界大戦中、ナチスの収容所で、ゲーテを読んで救われたという逸話が、とても多く報告されています。

 

 

 

  ♦陽気さと真っすぐな心があれば、最終的にはうまくいく

  ゲーテ著『詩 格言風に』の一説です。

 

 

 自分の事を「無能」と評価しているカフカや、人生を「ただ悲しみの連続」と表現しているドストエフスキーと異なり、ゲーテの言葉には希望が多分に含まれています。

 

 実際のゲーテも陽気さと真っすぐな心で詩を作り、食事を楽しみ、山に登り、たくさんの恋をしてきた人でした。

 驚くべき事に、74歳の時に、19歳の少女に、結婚を申し込んだりもしています。

 

 太陽のような存在であったゲーテですが、月の大切さも、きちんと理解している所が、ゲーテ文学の深みです。

 

 

  ♦絶望することができない者は、生きるに値しない…

  ゲーテ著『詩 格言風に』の一説です。

 

 

 絶望を否定するのではなく、避けるわけでもなく、見下すわけでもなく、絶望は大切な経験であるという事が、ゲーテの主張です。

 

 

 

 「僕は勝ち負けなんて見てない。高橋君、勝ち負けなら僕は負けてばかり。その上…嘘つきだ。」

 「勝つスコーピオンはそりゃあかっこいい。でも、負けるスコーピオンも同じくらいかっこいい。」

 

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  『リアル』花咲君の言葉です。

 

 

 

  …私は、いつもみんなから、幸運に恵まれた人間だとほめそやかされてきた…

  …私は、愚痴などこぼしたくないし、自分のこれまでの人生に、けちをつけるつもりもない…

 

  …しかし、実際には、苦労と仕事以外の何ものでもなかった…

  …75年の生涯で、本当に幸福だった時は、1カ月もなかったと言っていい…

 

  …石を上に押し上げようと、繰り返し、永遠に転がしているようなものだった…

 

  『ゲーテとの対話』の一説です。

 

 

 ゲーテの人生は、幸福だった。

 ゲーテの人生を、後世から見ると、そのように感じます。

 実際、ゲーテ自身も、そのように感じていたでしょう。

 

 良い友達もたくさんおり、たくさんの女性から愛され、国の大臣にもなり、貴族の称号まで貰います。

 82歳の誕生日の前日に、生涯をかけて書いた大作『ファウスト』を完成させ、その数カ月後に亡くなるという大往生の人生でした。

 

 しかし、これは、私達が、ゲーテの人生を、あらすじでみているから、感じる事なのかもしれません。

 人生をあらすじでみれがゲーテの人生は幸福ですが、他人にはわからない密かな悲しみや怒り・悔しさ等が、誰の人生にも隠れています。

 

 ゲーテが大臣になった国は、とても小さく、財政も逼迫していました。

 

  ☆財政

  ★外交  

  ☆農業

  ★鉱山の開発

  ☆条例作り

 

 ゲーテは、1人で上記のような異なる種類の仕事を、こなしていました。

 多忙の極みで、この時期には、ゲーテは書く事が出来なくなっています。

 

  ♦鉄の忍耐。石の辛抱

 

 また、25歳の時に『若きウェルテルの悩み』で著名な作家になったものの、実は、その後は、作品が売れない時代が続きます。

 その為、自分の努力を「塵の中でうごめく虫の努力に過ぎない」と手紙に記しています。

 

 さらに、ゲーテの周りでは、大切な人が、次々と亡くなります。

 4人の弟・妹を亡くし、その中でたった1人残った可愛がっていた妹も、26歳の若さで亡くなります。

 親友であったシーラも、亡くしてしまいます。

 

 母も、妻も亡くなり、晩年の81歳の時には、たった1人の息子であったアウグストが、旅行中に突然亡くなってしまいます。

 ゲーテは、ショックのあまり、大量の血を吐いて、倒れてしまいます。

 

 

  ♦光の強い所では、影も濃い

 

 ゲーテは、多くの喜びの一方、多くの悲しみも、経験しています。

 

 

 私達は、どうしても、人の人生を、あらすじで見てしまいます。

 あらすじで見ると、とても幸福な人と、とても不幸な人の、2種類しか見えなくなってしまいます。

 

 しかし、人の人生は、あらすじだけではありません。

 幸福な人の人生にも悲しみや怒り・悔しさがあり、不幸な人の人生にも喜びや楽しさ・興奮があったりします。

 

 あらすじだけで、人の人生をみる事をやめると、その人に対する見方が、随分変わります。

 あらすじだけで、人の人生を見ない事を、お勧めします。

 

 

 

  …涙とともにパンを食べたことのない者には、人生の本当の味は、わからない…

  …ベッドの上で、泣きあかしたことのない者には、人生の本当の安らぎは、わからない…

  ゲーテの言葉です。