「最後のゲームでも、しっかりPKを出しました。私達のアイドル、ジャンルカ・ロッキさんです。」
2019/20シーズン、ジャンルカ・ロッキのレフェリー引退試合ともなったユベントスVSローマの試合の北川さんの実況です。
ワールドカップ優勝予想、私は昨年より、イタリア、アズーリと答えてきました。
しかし、現ヨーロッパ王者は、ワールドカップ出場を逃すという珍事が起きています。
ただ、ワールドカップに出場しなくても、存在感を示す国、それがイタリアです。
優勝候補筆頭と言われたものの初戦でサウジアラビアに敗れたアルゼンチン代表のスタメンは、ロメロ(元アタランタ)デパウル(元ウディネーゼカピターノ)パレデス(ユベントス)パブ(元アタランタカピターノ)ラウタロ(インテル)ディ・マリア(ユベントス)等、イタリアに馴染のある選手ばかりでした。
オーストラリアにまさかの先制点を決められた現世界王者フランスの1点目は、テオ(ミラン)からラビオ(ユベントス)、2点目はラビオ(ユベントス)からジルー(ミラン)というイタリアで活躍する選手達が、レブルーを救いました。
現段階で最も地味、ある意味ワールドカップな試合を展開したポーランドVSメキシコにおいては、2022/21前半戦ヨーロッパで最も勢いのあったチームであるナポリのジーリンスキ(ナポリ)とロサーノ(ナポリ)の戦いでもありました。
イタリアに馴染のある選手が、代表のユニフォームを着て国を背負い戦う姿を見る事は、我が子が活躍している姿を観ているかのような嬉しさがあります。
そして、何と言ってもイタリアにおいて最も存在感を放ったのは、ワールドカップ開幕戦のジャッジを任されたダニエレ・オルサートではないでしょうか。
昨シーズン引退を表明していたオルサートですが、今シーズンも何事もなかったかのようにジャッジを続け、ワールドカップ開幕戦のジャッジまでしている事に、思わず笑みが零れてしまいます。
カルチョファンにはお馴染みのオルサート。私は、彼の選手と対話をしながらゲームを進めていく姿勢を高く評価しています。
開幕戦においても、きちんと仕事をこなしたオルサートですが、イタリアの新聞には「オルサートがワールドカップにおいてPKでアドバンテージを与え、ローマファンが激怒したわけ」という見出しが躍りました。
これに対し、ローマファンを中心にイタリア国内からオルサートに対し、批判が向けられている事を報じました。
批判の的とされたのは、エクアドルの先制点に繋がるPK判定のシーンです。
エリア内でエクアドルのバレンシアが倒されると、オルサートはアドバンテージを取り、プレーの展開を見守りました。
その後、カタール選手がボールをクリアした時点で、PKの指示を与えました。
オルサートは、ルール通りの良い判断をした訳ですが、ローマファンはこれを快く思わなかったようです。
その理由は、2021年10月に行われたユベントスVSローマにおいて、オルサートがアドバンテージを認めなかった為です。
アリアンツスタジアムで行われた一戦は、エイブラハムが倒された後、ムヒタリアンがこぼれ球を拾い、ゴールネットを揺らしました。
しかし、オルサートはすぐにファウルとジャッジし、PKを指示しました。
アドバンテージを認めていればゴールだったものを認めず、そればかりか、ローマはそのPKも失敗し、最終的にユベントスに敗れてしまいました。
この試合後、オルサートは「PKのシーンでは、アドバンテージを認めない。PKを失敗した事を私のせいにするのか?」等と反論をしました。
しかし、1年以上の年月が経過し、ワールドカップ開幕戦という大舞台で、オルサートは自らの反論とは真逆のジャッジをしました。
イタリア紙は、ワールドカップ開幕後の見出しに「ローマファンの方が正しかった」という記事を載せました。
その舞台に出る資格がなくとも、存在感を示す方法がある事を、イタリアから学ぶ事が出来ます。