私の中のワールドカップ7

 

 「ジジと、また逢えるのは嬉しい事だ。彼には、プロとして大きな尊敬の念を抱いているし、友人としても大きな愛情を感じている。」

 「アンチェロッティ?誰を応援するべきか分からない時は、アンチェロッティを応援してほしい。厳しい世界において、自然と称賛を勝ち取った人物だ。他の人が持っていない何かを持っているのだと思う。」

 18/19チャンピオンズ、パリVSナポリ、当時パリに移籍しパリでチャンピオンズデビューを飾るブッフォンに対するアンチェロッティの賞賛と当時ナポリ監督であったアンチェロッティに対するブッフォンの賞賛です。

 

 

 クロアチアVSブラジルのPK戦を観て、私は1994年のバッジョがPKを外した時と同じ位のショックを感じました。

 その理由は、私がこの4年間最も観てきた選手の1人であるマルキーニョスがPKを外し、ブラジルが敗退してしまったからです。

 しかし、その後すぐにその気持ちが和らぎました。

 私が気持ちが和らいだ理由は、それぞれが個人個人で悲しみを嘆く中、ダニアウベスが誰よりも早くマルキーニョスの元を訪れた姿を観たからです。

 私の中で、セレソンで過去4年間最も活躍を継続してきた選手、つまり、最もチームに貢献してきた選手は、マルキーニョスであると確信しています。

 7月日本ツアーにおいても、観客席にパリの中で、マルキーニョスの声だけが届いていました。

 昨年までは、フットボールを知り尽くしたかのような観察眼で、どの試合においても、後ろから試合をコントロールしていたマルキーニョスですが、今シーズンはその観察眼と身体とチームがフィットしていない印象がありました。私は、3バックという戦術の問題だと感じていましたが、フットボールとは因果なもので、そのズレが、このような形で表出してしまう事もあります。

 持論ですが、マルキーニョスが最も活きるポジションは、アンカーであると私は考えています。

 

 

 …ブッフォン、セルヒオ・ラモス、キエッリーニ…

 私は、ワールドカップを観ていて、どこか物足りなさを感じていました。

 その物足りなさとは、時にその笑顔で相手チームも包み込み勝敗を決定してしまい、時にその危険なプレイで自らを犠牲にチームを救い、時にその雄叫びでチームの血液量を増やすかのような存在です。

 そして、その存在は、攻撃の選手ではなく、守備の選手に求めらると私は感じています。

 

 今回のワールドカップ、どの選手も真剣な表情で、相手選手と会話を交わす事も少なく、笑顔が少ない事が特徴ですが、私はクロアチア戦もネイマールがいつものように相手を挑発するかのように笑顔でプレイをしていた方が、勝利を引き寄せる可能性が上がったのではないかと考えています。

 確かに、最近の若手のDFやGKの方が、おそらくブッフォン、ラモス、キエッリーニ等よりも、能力だけを見たら上でしょう。

 それでも、私はPK戦になる度に、EURO2020のキエッリーニの存在感とその存在感が勝利を引き寄せたシーンを思い出してしまいます。

 しかし、能力が高いだけでは、継続的な活躍と結果を残す事が出来ない事が、フットボールの奥深い所です。

 

 

 「ジジ?彼がNO1だよ。」

 19/20シーズン、コパイタリア決勝、ブッフォンがGKを務めるユベントスにPK戦で勝利したナポリGKメレトの試合後インタビューです。

 コロナ等、世界が危機となった時、その存在感だけで、世界に希望をもたらしてくれるような選手。

 そんな時代に逆行するかのような選手以上の存在の選手の誕生を、心待ちにしています。