小学5年生の21時半、祖父母が営むラーメン屋から帰宅をする東名高速道路の中で、ラジオを通じて日本が初めてワールドカップに出場した試合を聞きました。
ラジオを通じての実況は映像が見えない分、余計ハラハラした事を覚えています。
日本が初めてワールドカップに出場したフランス大会以降、私の興味はヨーロッパのフットボールに移っていきました。
あれ程夢中になっていた日本代表にも、Jリーグの試合にも興味がなくなり、その代わり、毎日のようにヨーロッパのフットボールを観ていくという生活になっていきました。
そして、少しずつ日本代表の試合においては、相手チームを応援するようになっている自分に気付きました。
日頃フットボールに何の興味がないにも関わらずワールドカップだけお祭りのように騒ぐ人達や、サッカーをやっているにも関わらず著名な選手の一部分だけを切り取り「マジ、リスペクトだわ。」等という友人、中学や高校の教員同様に何のプランもなく試合を展開し多くの才能を潰していく日本サッカーに失望していたからかもしれません。
もちろん、フットボールはビジネスであり、ミーハーな人達が必要な事も、私を含め誰もが最初はミーハーである事は理解出来るのですが、どうもフットボールにおいてはこの邪念が払い切れずにいます。
ヨーロッパ王者が、ワールドカッププレイオフで敗退しました。
私はEURO同様ワールドカップ優勝はアズーリであると断言していた為、ワールドカップ開幕前をして、私の予想は外れてしまいました。
日本とイタリアどちらにワールドカップに出場してほしいかと問われたら、100%の気持ちでイタリアと答えます。
ワールドカップ1994年準優勝、2006年優勝、EURO2012年準優勝、2020年優勝という結果を残してきたチームが何故ワールドカップに出場出来ないのかと問われれば「イタリアだから。」と答える事しか出来ません。
北川さん実況、細江さん解説というカルチョファンにとって万全の体制で臨んだプレイオフ1回戦「スィー」の大合唱で終わるイタリア国歌を聞いた時、誰もが勝利を疑いませんでした。
北マケドニアは予選でドイツにも勝利しており、カルチョでは馴染みのある選手も複数いる侮れないチームであると頭では理解していましたが、正直な所、次の戦い、おそらくポルトガルとの大一番をイタリア人の誰もが考えていたはずです。
楽観主義はイタリア人の魅力ですし、過去の失敗を引きずらない、否、忘れてしまう事もイタリア人の魅力です。
実は前回ワールドカップも、アズーリはプレイオフで敗退し、出場していません。
この失敗という経験を活かしてアズーリは、マンチーニの下、少しずつ改善を図り、ジョルジーニョ・バレッラ・ヴェラッティというイタリア史上最高の中盤3人により構成するポゼッションを重視したフットボールを展開し、結果も残してきました。
しかし、失敗から学ぶという事同様、大一番に弱いというDNAも、遺伝子としてイタリアには浸透しているのではないかと疑いたくなってしまいます。
昨今のフットボールは、その国が持つ経済力が、そのまま国のフットボールの実力に比例するという方程式が成立しています。
経済力のある国に、良い監督や選手が集まり、良い監督や選手を集めたチームが複数存在する事により、その国のフットボールは進化していきます。
ヨーロッパのGDP1位はドイツ、2位イギリス、3位フランスです。
以前は国の経済力には関係なく、セリエAやラリーガの数クラブがフットボールの中心でしたが、現代では国の経済力とクラブチームやリーグのレベルも比例し、クラブチームやリーグのレベルがそのまま代表チームの実力にも比例するという図式が成り立っています。
事実、チャンピオンズリーグベスト8にイタリアのチームは、1チームも残っていません。
私はイタリアという国と、セリエAというリーグが好きですが、セリエAやイタリア代表が常に強く在り続ける為には、国の経済力が不可欠です。
8か月前ヨーロッパ王者となったチームが、ワールドカップ出場を逃すという如何にもイタリアらしい結末に、笑いやら涙やら複雑な気持ちですが、ワールドカップの舞台に青いユニフォームと世界一盛り上がる国歌斉唱を聞く事が出来ない事に、残念な気持ちでいっぱいです。
「イタリアの兄妹よ、イタリアは今目覚めた。」
国家の歌詞同様、この失敗を糧にイタリアの目覚めに期待しています。