「お前さんはよ、書を以って世を耕し、この日の本を、もっと豊かな国にすんだよ。」

大河ドラマ『べらぼう』源内先生の言葉です。
♦こうでなければいけないを否定していく物語
★『新選組』山南敬助:堺雅人
☆『真田丸』真田正幸:草刈正雄
★『どうする家康』織田信長:岡田准一
『べらぼう』源内先生を演じる安田顕の演技は、大河史に残るものでした。
そんな源内先生との早過ぎる別れを、私は、いまだに引きずっています。
源内の人生とは「こうでなければいけないを否定していく物語」です。
源内は、現在の香川県さぬき市志度の下級武士の三男として、生まれます。
生まれが全てと言っても過言ではない時代。源内は、生まれに恵まれませんでした。
しかし、その才能と、才能を見出す人物達が、源内の人生に光を当てます。
そのおかげで、源内は、13歳にして当時の最新の学問「本草学」を学び、思春期から青年期に掛けて、長崎・大阪・江戸等への遊学を許されます。
「本草学」とは、薬用に重点を置き、植物やその他の自然物を研究する学問です。
そんな突出した才能を持つ源内を、当時の高松藩主は、源内の生まれの身分からすると、好待遇で召し抱えます。
しかし、源内は、高松藩という狭く、政治という柵(しがらみ)の中で、生きた心地がしません。
「やりたい事」ではなく「やらなければならない事」をやる生活に、源内は、八方塞がりとなります。
「自由に生きるってのは、そういうもんでさ。世の中には、人を縛る色んな理屈があるじゃねえか。」
「親とか、生まれとか、家とか、義理人情。けど、そんなものは顧みずに、自らの思いによってのみ生きる。」
「わがままに生きるって事を、自由に生きるって言うのよ。わがまま通しちまったんだから、きついのは仕方ねえよ。」

大河ドラマ『べらぼう』源内先生の言葉です。
♦わがままに生きるって事を、自由に生きるって言うのよ
源内は、高松藩主に辞職の意向を示します。
しかし、源内を離したくない高松藩主は、源内の辞職の意向に、取り合ってくれません。
1カ月・2ヵ月‥6ヵ月が経った頃、ようやく高松藩主は、源内の辞職を認めます。
しかし、それには条件が付いていました。
その条件とは「今後、どこの藩にも仕えてはいけない」というものでした。
当時の日本、否、現代の日本においても、どこかの藩やどこかの会社に所属をしなければ、お金も仕事も得る事は出来ません。
この高松藩主の条件とは、源内の将来を奪うようなものでした。
☆本草学者
★医者
☆蘭学者
★地質学者
☆作家
★発明家
源内の肩書は、多岐に渡ります。
これは、藩という後ろ盾をなくし、自由に、自分のわがままを通す、否、通す事でしか生きていく事が出来ない状況に置かれたからこそ出来た事かもしれません。
…近頃、お江戸に流れしは、死を呼ぶ手袋の噂。そこに目をつけたのは稀代の悪党。その噂を使い、あちらこちら人殺し…
…だが、その鬼畜の所業に気付いたる男がいた。その名も七ツ星の龍。しかし悪党も大したもの、なんとその龍こそを人殺しに仕立て上げる。危うしの七ツ星!…
…そこに現れたるは古き友なる源内軒。これより幕を開けたるはそんな二人の痛快なる敵討ち…

大河ドラマ『べらぼう』源内の最後の作品です。
♦強い国の裏側にあるのは、科学の先にある経済である
★平賀源内
☆佐久間象山
★坂本龍馬
時代を変革するような人物は、人生のどこかのタイミングで、強い国の裏側にあるのは、科学の先にある経済である事に、気付きます。
その為、ただ「外国人を排除する」というような世界観ではなく、日本で作ったもので海外を相手に取引をしようという世界観を持ちます。
『べらぼう』においても、田沼意次と源内が互いに惹かれ合ったのは、強い国の裏側にあるのは、科学の先にある経済である事に、2人だけが気付いていたからでしょう。
源内は、現在の文京区湯島にて、日本初の物産会を開催します。
物産会とは、薬物・物産を展示する会です。
当時の課題は、日本全国の薬物が集まらない事。
源内は、これを各関所に現在の宅急便を設置する事で、解決します。
日本各地の関所に、薬物を届ければ、そこからは江戸の源内に着払いで、薬物が届くシステムを構築します。
これにより、日本初の物産会には、蝦夷(北海道)から琉球(沖縄)までの日本全国に加え、海外からの薬物も展示されました。
源内は、これだけでは、満足しません。
本当に大切なのは、物産会で得た知識を、後世に届ける事。
源内は、日本初のパンフレットを作成します。
物産会のパンフレットがあれば、後に知識に赴きを置く才能溢れる人達を、助ける事に繋がります。
★宅急便システム
☆パンフレット
現在の日本でも続く、否、これ無しでは私達の生活は成り立たないこれらのシステムは、源内が始めたものだったのです。
さらに、当時は時代が源内に追いついていなかった為、社会に定着しなかった「エレキテル」。
現代では整形外科・接骨院等で当たり前に行われている電池治療も、源内が、始めたものです。
「俺には、もう何が夢で、何が現(うつつ)なのか、わかんねえんです。」
「源内。夢ではない。俺は、ここにいる。」
![安田顕 さらば平賀源内!「心の中の源内さんと会話しながら演じてきました」【大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」インタビュー】 | OVO [オーヴォ] | ページ 2](https://tvfan.kyodo.co.jp/wp-content/uploads/2025/04/56ee6007c47a843b2012fbe7f285cbd6-1-430x242.jpg)
大河ドラマ『べらぼう』源内と意次の会話です。
これが、2人の永遠の別れとなってしまいました。
源内が捕まる少し前、源内と意次は、喧嘩別れをします。
不幸は重なるもの。源内の最後の作品は、江戸幕府の裏で働く政治家達を、真っ向から批判したものでした。
…近頃、お江戸に流れしは、死を呼ぶ手袋の噂。そこに目をつけたのは稀代の悪党。その噂を使い、あちらこちら人殺し…
…だが、その鬼畜の所業に気付いたる男がいた。その名も七ツ星の龍。しかし悪党も大したもの、なんとその龍こそを人殺しに仕立て上げる。危うしの七ツ星!…
…そこに現れたるは古き友なる源内軒。これより幕を開けたるはそんな二人の痛快なる敵討ち…
七つ星とは、田沼家の家紋。
龍とは、意次の幼少期の名前です。
源内軒は、そのまま源内です。
これが世に出ると、困るのは、江戸幕府の裏で動いている政治家達です。
「べらぼう」においては、この作品が仇となり、源内は、殺されたように描かれています。
「言うたではないか。お前の為にも忘れよと。」

涙を溜め、言う意次からは、源内との関係性を知る所が出来ます。
こうでなければいけないを否定していく物語。
源内の人生から、現代を生きる私達が、学ぶべき所が、たくさんあります。