「…私の撮りたい映画は…映画館を出て、帰り道、楽しかったねって言われるような映画。私が観てきたような、人生に小休憩や思い出をくれる映画…かもしれない。」
「それって、映画を撮って満足じゃないってことですよね。」
「え?そうね。私は、たくさんの人に観てもらえる、そういう映画を撮りたい。海くんは?撮りたい映画。」
「俺は、多分たくさんの人に観てほしいとかは、あまりなくて。俺が面白いと思ったことをつきとめて、そういう純粋な、なんていうか、オレが満足する映画を撮りたいです。」
…私はきっと海くんと、辿り着く岸の違う航海を、照らし合うことができたら、迷わずに進んでいけるだろう…
『海が走るエンドロール』うみ子と海の会話、そして、うみ子の脳内言葉です。
男の子に2人1組になって貰い、課題を解いて貰います。
そして、課題を解き終える度に、2人の成績が読み上げられます。
Aチームの男の子達には「成績が良かった方が勝ち。勝った方は、御褒美を貰える。」と伝えました。
Bチームの男の子達には「勝ち負けはなし。2人には研究に協力してくれた御褒美をあげる。」と伝えました。
実験後、自分の成績を振り返って貰いました。
すると、Aチームの男の子達は、自分の能力や運と成績を結び付けた子が多いという結果でした。
これに対し、Bチームの男の子達は、自分の努力と成績を結び付けた子が多いという結果でした。
この実験から、他者との競争は過信を生みやすく、自分との競争は意欲を生みやすい事が理解出来ます。
勉強においても、スポーツにおいても、仕事においても、競争は必要です。
競争があるからこそ、お互い高め合い、お互いを成長させる事が出来るという考えを持っている人は、多いのではないでしょうか。
テストの順位や、練習や試合のパフォーマンス、仕事の成果等により、成績が決まったり、試合に出場する事が出来たり、給料の増減がある事により、人はもっと頑張らなければと思い、行動をしていきます。
ところが、競争は、勝敗の結果が出た後が問題です。
人は、結果が出ると、何故その結果が出たのかを分析します。
この分析が数値等を用いたり、具体的にどこが悪かったのかを見直したり、やり方を工夫する等の分析であれば良いのですが、多くの人の分析はもっと大雑把です。
競争に勝った人は「自分は出来る人間だから」「自分は強運だから」等と結論付けます。
競争に負けた人は「自分は出来ない人間だから」「自分は運がないから」等と結論付けます。
能力や素質、運等は、自分の努力や工夫では、どうしようもない部分が大きいです。
その為、組織内で競争を繰り返していると、次第に努力も工夫もしなくなる人が増えていきます。
活躍出来る人と、活躍出来ない人が、固定化するのです。
確かに、高校に入学し、1年生の1学期終了時のテストの順位と、3年生の3学期終了時のテストの順位は、ほとんど変動しません。
活躍出来る人と、活躍出来ない人が、固定化すると、組織全体としては、弱い組織になっていきます。
競争は、他者とするのではなく、いつでも自分としていく事が、長期的に成果を出し続ける事とともに、自らの心を守る上でも大切になります。