…あんな自分勝手で強い人間を、平良は初めて見た。清居は自分を助けてくれたわけじゃない。あの場面じゃなかったら、誰が平良をヒィくんと呼ぼうが、パシリに使おうが、どうでもいいと流していた気もする。清居は自分が命じたことを後回しにされることが我慢ならなかった。たかだそれだけの理由で吉田を潰した…
…小学校の頃から延々と負のループに巻き込まれ続け、ラインの向こうに落ちそうだった自分を、清居はごく自己中心的な理由で引っ張り戻した。優しさとか、正義感とか、そういう褒められるものではないところで世界を回した。それも、いともあっさりと…
…筋も何も通っていない。でも清居にはそれを押し通す力がある。なんてすごいんだろう。なんて格好いいんだろう。そう思う自分は、多分、間違っているんだろう。でも悲しいかな、優しさや正しさが救いにならないことは嫌というほど知っている…
…汚水を流れていくアヒル隊長を、自分がただ見送るしかなかったように、正しさや優しさは底辺ループに巻かれて落ちていく平良に同情はしてくれても、清居のように力任せにつかんで引きずり上げてはくれなかった…
『美しい彼』平良の脳内言葉です。
9・10・11日と精神保健福祉士の受験資格取得の為に、大学で講義を受けていました。
学べる点は複数あったものの、私は大学時代に感じた違和感と同様の違和感を感じていました。
その違和感とは、講義が精神障害者視点でしか語られないという違和感です。
確かに、精神障害者の歴史を辿れば、多くの人が同情を抱く事でしょう。
100年程前には座敷牢に閉じ込められている事が当たり前で、1980年代まで精神病院において看護師等による暴行で精神障害者が亡くなる事が相次ぎ、現在でも社会的入院と呼ばれる退院出来るにも関わらず病院の稼ぎの為に入院を余儀なくされている人もいます。
しかし、ここのみに着目し、精神障害者の人権を守るべきとか精神障害者が生きやすい世の中をとばかり主張する事に、私は反対です。
100人以上いた受講生の誰も、そのような違和感を感じていない様子でした。
多くの人は、優しさや正義を過信し過ぎです。
しかし、優しさや正義では、人を救う事等出来ないのです。
世の中は、カオスです。
カオスとは、予測が困難な極めて複雑な振る舞いをする現象です。
カオスを端的に表した表現が、バタフライ効果です。
蝶の羽ばたきが竜巻を起こす。
本当にそんな事が起きる事は誰も証明出来ていませんが、カオスを上手く表している表現です。
蝶が羽ばたく程の小さな空気の揺れが、やがて竜巻を起こす程の大きな大気の乱れに繋がるのかもしれません。
人生も、人間関係も、同様です。
日本人は人の言う事にYESと言い過ぎですし、そもそも世の中のほとんどはYESかNOの二者択一であると思っています。
さらに、人と違う意見を言う=その人の事を嫌いと思っている人も多いですが、これは意見が違うというだけなのです。
大学時代と同様、講義からの帰り道、早くこの気持ちを真ん中に戻してもらいたく漫画やアニメを渇望する自分がいた事に、思わず笑ってしまいました。
…誰も何もしてくれないと拗ねる前に、ほんの少し勇気を出してほしいとか、助けてと声に出してほしいなんて言う人がいる。あまりに真っ当過ぎて、それを突き付けられたこっちは力足らずでごめんなさいとうなだれるしかない。完全無欠なものに抵抗はできない…
『美しい彼』平良の脳内言葉です。