翡翠とともに、育つ

 

 「ナンセンス。目的を介した人間関係はビジネス。恋愛とは一番遠い所にあるものです。心の安らぎを得るための場所で、エゴを追及して、あなたは幸福に近づけますか?」

 『宝石商リチャード氏の謎鑑定』リチャードの言葉です。

 

 

 5月の誕生石は、エメラルドと翡翠です。

 艶のある深緑色がオリエンタルな魅力を醸し出す翡翠は、アジア圏や南米では特に人気が高く、日本とも深い関係を持つ宝石です。

 日本では結婚35周年の記念として、翡翠のジュエリーや小物等を贈り合う習慣があります。

 

 中国では、翡翠は「皇帝の石」「神々の石」と考えられ、黄金よりも貴重な物として扱われてきました。

 王族の記章が翡翠であったのに対し、黄金の記章を付けられるのは官吏の中でも、第三・第四階級の者であったと言われています。

 一夫多妻制の時代には「第一夫人には翡翠を、第二婦人にはダイヤモンドを」といった言葉が使われていました。

 中国では、人のあるべき心構えとして「五徳(仁・義・礼・智・信)」という思想が人々の心に定着しています。

 翡翠は、この五徳を高めると信じられ、中国の人々は、ダイヤモンドの輝きよりも、翡翠の潤んだ照りを称え、大切にしてきました。

 

 翡翠は、日本でも産出される事から、日本の国石とされています。

 世界最古の翡翠があるのも、日本です。

 糸魚川から産出される翡翠は、5億年以上も前に出来たものであると推測されています。

 縄文時代には縄文人が翡翠の加工を始め『古事記』にも登場する等、翡翠は日本の歴史とも深い関わりを持つ宝石です。

 

 そして、翡翠という感じには「カワセミ」という読み方があるように、宝石と称される鳥、カワセミが名前の由来となっています。

 赤と緑の美しい色彩を持つカワセミが、同じく赤と緑を併せ持つミャンマー伝来のヒスイと似ている事から、翡翠という名がつけられたと語り継がれています。

 

 翡翠の宝石言葉は「繁栄・長寿・幸福」です。

 孔子も「ジェイド(翡翠)の明るさは、天を表している。」と記しています。

 お守りとしての歴史も長く、ネガティブなエネルギーから身を守り、持ち主の魅力を伸ばしてくれると信じられています。

 

 翡翠は、身に着ければ身に着ける程、色が育つ宝石と言われています。

 肌に含まれた油分が、翡翠の表面の艶を増やす事により、翡翠は身に着ける程、輝きます。

 通常宝石には、皮脂等は大敵ですが、翡翠はその逆なのです。

 

 木々が青々と育ち、命の営みを感じる事も多い5月。

 私達人も、入学や入社等4月のバタバタとした感じがようやく落ち着き、地に足をつけ、自分の足で踏みだす事が出来るようになるのが5月頃からではないでしょうか。

 自然の営みを感じる事が出来る翡翠を身に着け、ともに育っていく事も、素敵ではないでしょうか。