聞き手に絵を見せるように話す

 「私は大学の寮の部屋もなく、友達の部屋の床の上で寝起きしていました。食べ物を買うために、コカコーラの瓶を店に返し、5セントをかき集めたりしていました。温かい食べ物にありつこうと、毎週日曜日は7マイル先にあるクリシュナ寺院に歩いて通ったものです。」

 ジョブズのスタンフォード大学でのスピーチです。

 貧しかった大学時代と伝えるのではなく、友達の部屋の床・コカコーラの瓶・温かい食べ物等、細かいディテールを伝える事で、話を聞く人達の脳内に誰も経験した事のないはずのジョブズの物語を描写させています。

 

 私は、中学生の頃から授業が退屈でした。

 授業の中身は面白いにも関わらず、それをただ教科書を読むだけという事を繰り返す教師の授業のやり方が退屈でした。

 この気持ちは、高校・大学、そして現在まで続いてますが、複数の友人に話しても、友人は疑問にすら感じていない様子でした。

 

 日本人の講義やプレゼンは「壁に向かってひとりボールを打ち返す壁打ち」になってしまっている事が多いです。

 そのような講義やプレゼンを「集中して聞くように。」等と言う方が間違っています。

 つまらない話を聞かせるのは、ただの時間泥棒です。

 

 これに対し、面白いアニメや映画、ドラマであれば、飽きる事なく観続ける事が出来ます。

 その理由は、面白いアニメや映画、ドラマは魅力的な物語となっており、人の脳を刺激し、脳内ホルモンを分泌させるからです。

 興奮やドキドキをもたらすアドレナリン、幸せな気持ちや落ち着いた気持ちをもたらすオキシトシン等のホルモンが活発になり、感情が刺激される事で、人のその物語に夢中になります。

 

 物語には、聞き手の脳をハッキングする効果があります。

 「ただいまご紹介にあずかりました〇〇です。」

 上記のように自分の名前の紹介から講義やプレゼンを始める人は多いですが、多くの場合、司会者がすでに名前や経歴等を紹介していたり、資料等に名前が書かれています。つまり、聞き手は話しての名前はすでに知っているのです。

 自己紹介から始まる講義やプレゼンは、退屈な講義やプレゼンの典型です。

 自己紹介ではなく、物語から講義やプレゼンを始めると、聞き手の脳をハッキング出来る為、魅力的な講義やプレゼンになる可能性が高まります。

 物語からプレゼンを始める事をお勧めします。