脈々とそのDNA、ロマ二ズモというものは受け継がれています。言葉こそありませんでしたが、ダニエレ・デ・ロッシとサポーターとの関係がより深いものであったことは、一人一人のロマ二スタのサポーターの涙でわかります

 

 「スタディオ・オリンピコです。イタリア語には、バンディエラという言葉があります。旗という意味です。この言葉は、イタリアサッカー界においては、クラブの象徴を意味します。90年代から2000年代初頭には、この言葉が紙面を飾ることが多かったものの、今日(こんにち)では、あまり見かけなくなりました。それは、もはや1チームに留まることが時代にそぐわないのかもしれません。」

 「しかし、このASローマには、脈々と他のクラブには薄くなってしまった、このチームの象徴というものが息づいています。ジャンニー二やトッティ、ディ・バルトロメイ、そして、DDRことダニエレ・デ・ロッシ。18年間トップチームで、トッティの背中を見ながら成長し、今日が615試合目。今日ローマを去ります。」

 「ASローマの今回の決断に関して、私は言いたいことは山ほどあります。しかし、それをグッと堪えて90分間ダニエレ・デ・ロッシの雄姿をロマ二スタの皆さんと、そして、セリエAを愛する皆さんと共に目に焼き付けたいと思います。今日は、私にとって痛みの伴う90分間です。」

 デ・ロッシ、ローマでの最後の試合の北川さんの伝説の実況です。

 

 

 このASローマが、11月にジャパンツアーを開催します。

 11月はワールドカップ開催中である為「何故このタイミングで?」と思う方もいるかもしれません。

 でも、大丈夫。現ヨーロッパチャンピオンであるイタリアはワールドカップ出場を逃していますから。

 

 そして、当たり前のように北川さんはアドバイザーとなり、ツアーの下見に来たローマ幹部とも合流していました。

 トヨタがローマのスポンサーになった事がジャパンツアーの決め手であると思いますが、私はローマとイタリアサッカーが好きを発信し続けた北川さんが引き寄せたものであると信じています。

 

 

 カリフォルニア大学が行った実験で、被験者にディズニーランドで観光客がバッグス・バニーと握手している写真を見せました。

 すると、40%の被験者が、自分もディズニーランドでバッグス・バニーに会った事を思い出しました。

 しかし、バッグス・バニーはディズニーのキャラクターではない為、その記憶はあり得ない記憶です。

 

 人は、全ての経験を記憶しているという考えがあります。

 たとえ忘れていたとしても、意識の奥底には、きちんと記憶が残っているという考えです。

 しかし、記憶というのは、正確なものではありません。

 記憶は、その時その時の自分の解釈により、編集が加えられるからです。

 

 例えば、部下に頼み事をしたら、冷たくされたという出来事があったとします。

 これにより、自分は部下に嫌われているという記憶が編集されます。

 しかし、本当は部下は仕事で大きなトラブルを抱えていたのかもしれません。大切な人との別れがあったのかもしれません。若しかしたら、体調が悪かったかもしれません。

 だから、上司の頼み事にも、冷たく対応をしてしまっただけなのかもしれません。

 

 記憶は、いい加減なものです。

 苦手だと思っている事を苦手のままにしている事もありませんし、曖昧な記憶を利用し、自身で良い記憶に置き換える事も出来ます。

 

 私は、2019年から北川さんの影響で、セリエAを最も多く観ています。

 しかし、セリエAのレベルは、プレミアはもちろん、リーグアンよりも低く、ヨーロッパにおいてはリーガと横並びという印象です。

 それでも、イタリアという国やイタリア人の適当な感覚が、私にはとても魅力的に感じます。

 ユベントス監督アッレグリの元恋人は、アッレグリと別れた後、カウンセリングに通う事になった事を公表しています。

 

 コロナウイルスのヨーロッパの現状を、私は北川さんから学んでいました。

 ロシアウクライナ戦争が与えているイタリア人の生活に与えている影響を、私は北川さんから学んでいます。

 

 どのような状況も、理想の状況として捉え直すと、自信が溢れてきます。

 そして、その勘違いした自信を数年間持ち続け、行動を重ねていると、予想も出来ない状況を構築する事が出来ます。

 曖昧な記憶を上手く利用し、理想の状況を作っていきましょう。