芥川は生きている

 「誰もがまだ自殺者自身の心理をありのままに書いたものはない。僕はきみに送る最後の手紙の中に、はっきりこの心理を伝えたいと思っている。君は新聞の三面記事などに生活難とか、病苦とか、或は又精神的苦痛とか、いろいろの自殺の動機を発見するであろう。しかし僕の経験によれば、それは動機の全部ではない。のみならず大抵は動機に至る道筋を示しているだけである。少なくとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。」

 芥川龍之介の遺言です。

 芥川は、会社の近くに旧家があったり、『文豪ストレイドッグス』の太宰大好きな狂犬として親しんでいる為、どこか馴染みを感じてしまいます。

 私が大学で学んでいた10年程以前には、「100人いたら、1人は精神疾患になる。」と言われていました。

 これが現在の日本では、「10人に1人が鬱病になる。」というデータが出ています。

 さらに、「13人に1人が不安障害を発症し、不安障害に悩まされた人にまでデータを拡大すれば3人に1人にまで跳ね上がる。」というデータがあります。

 鬱病や不安障害は、人生を破壊しかねない可能性のある病気です。

 日中の活力は消え、夜は眠れなくなり、人生の喜びを味わう能力すら失われてしまいます。

 そこまでいかずとも、何となく毎日が空っぽに感じられ、いつも気分が沈みがちだったりと、軽い鬱病に悩む人は、少なくないでしょう。

 その原因を、1つに絞ることは、間違ったアプローチかもしれません。

 芥川が生きた時代では、鬱病の発症率は低く、社会の理解もありませんでした。

 香港大学の研究では、1937年以降に生まれた中国人の鬱病発症率は、それ以前に生まれた人の22倍であるというデータが出ています。

 成程、流石文豪芥川。死後100年程が経過しても、鬱病に関して、これ程説得力のある言葉を見たことがありません。

 芥川は亡くなっても、その言葉はいまだに生きています。