見とるか功。お前が蒔いた種は、確かに芽吹き、本物の花を咲かせているぞ

 

 「珍しいな。規則正しいお前が、こんな時間にトレーニングとは。」

 「べつにー」

 「さてはお前、鳴海に追い抜かれそうで、焦っとるな?」

 「察しが良すぎるのは、嫌われるぞ。伊丹。」

 

 「鳴海弦。遅刻欠席数数知れず。規則違反・命令違反で小隊から追い出されること8回。除隊処分寸前の問題児。だが、お前の様子を見るに、実力は本物‥か。」

 「あいつは、きっと第1部隊を背負って立つ。しかし、まだ足りん。勝利の経験もー敗北の経験も。私は壁として、立ちはだかり続けねばならん。無様な姿は見せられんのだ。あの馬鹿が本物になるまでは。」

 『怪獣8号』伊丹と四ノ宮功の会話です。

 

 

 歴史上の人物を観察していると、歴史に名を刻むには、3つの条件を満たす事が必要であると考える事が出来ます。

 

  ①幼少期に海外や違う土地の世界観を獲得している事

  ②誰かに引き立てられる事

  ③運が良い事

 

 

 藤原不比等を、御存知でしょうか?

 藤原不比等を知らなくても「大宝律令」を聞いた事がある人は多いのではないでしょうか?

 701年に制定された「大宝律令」は、日本で初めて定められた公式な法律であるとされています。

 そして、この「大宝律令」を作ったのが、藤原不比等です。

 

 不比等は「大化の改新」で著名な中臣鎌足の次男として、この世に生を受けます。

 鎌足は、幼き不比等を田辺史(たばべのふひと)一族に預けます。

 田辺史一族は、「唐」に滅ぼされた「百済」の人達が日本に亡命してきた一族でした。

 ここで、不比等は『後漢書』『文選』等の中国・朝鮮半島の書物に夢中になります。

 

 

 そのような環境で育った不比等を、悲劇が襲います。

 「壬申の乱」が勃発し、田辺史一族が味方した大友皇子が敗れてしまうのです。

 敗北後、不比等を始め、田辺史一族は冷遇される時を過ごします。

 

 

 しかし、冷遇される中でも不比等の類まれな才能を見つける人物がいました。

 後の持統天皇(うののさらのひめみこ)です。

 さらなる幸運が、不比等に訪れます。

 

 後の持統天皇の夫である天武天皇が崩御し、その息子も崩御したのです。

 ここで、異例の形であるものの天皇の后であった持統が天皇となるのです。

 天皇の後ろ盾もあり、不比等は、その才能を存分に発揮します。

 

 「大宝律令」の「律」は「刑法」「令」は「行政法」を意味します。

 「大宝律令」は、現代にも続く「刑法」「行政法」という2つを揃えた日本史上、初めての法律となります。

 「大宝律令」は、不比等が幼き頃に夢中になった「唐」の法律をモデルにしたものです。

 

 

 

 さらに、歴史に名を刻むようになる為の、条件を1つ。

 それは、隙です。

 「隙があるから、好きになる」は私が考えている人を好きになる条件の1つですが、真面目一本の人には、人は付いていきません。

 

 真面目は大切な要素ですが、真面目しかないのでは、人間的な魅力に欠け、生涯という長い戦においては、不利に働く事もあります。

 不比等は、持統天皇の亡き夫である天武天皇の妻を、妻に迎える等、色恋には法律よりも自分の好みを優先させていました。

 しかも、驚くべきことに、それを持統天皇の許可まで得て、実践します。

 

 どのような人物も、1人で歴史に名を刻む事は出来ません。

 歴史に名を刻むには、家族や部下・上司は勿論、数々の人に応援をして貰わなければなりません。

 応援をして貰うには、才能・知識・行動等は勿論、隙が必要となります。