「及川さん、背中にも目があるみたいです。」
「‥何でソレを知ってる?」
…えっっ冗談‥冗談だよな‥?…
「見るのも当然大事だけど、相手にどう見られているかも計算に入れなきゃね。」
『ハイキュー』日向の及川徹の会話です。
幸運=(行動×多様+洞察)×回復力
現代の運の方程式です。
今日は、洞察の話をします。
1945年軍需産業の技術者であったパーレー・スペンサーは、軍事用レーダーの実験中に、ポケットに入れたままであったチョコレートが溶けている事に気付きました。
この現象を基に、マイクロ波で熱を生む装置を思いつきました。
スペンサーは、2年後、現代も使われている電子レンジの雛型を作り上げました。
ワシントン大学が、面白い実験を行っています。
背が低い落葉樹の枝に1ドル札を3枚挟み、木の下を通った学生が1ドル札の存在に気付くかの実験です。
1ドル札が起これた高さは地面から175㎝の為、余程よそ見でもしていない限り、1ドル札に気付くだろうと予想が出来ます。
しかし、実際に1ドル札に気付いた学生は、19%のみでした。
また、学生が歩きスマホをしている場合は、その確率が6%にまで低下しました。
80%の学生は、目の前に垂れ下がった1ドル札を目にしながらも「異常はない」と判断し、金のなる木をスルーしていたのです。
このように視野に入ったものに気付けない現象は「非注意性盲目」と呼ばれています。
この原因は、私達の脳に埋め込まれているOSのようなシステムであり、この心理から逃れる事は困難を極めます。
私達の心理に、非注意性盲目が備わった理由は、脳の処理能力に限界があるからです。
私達の脳は、周りの景色・音・匂い等のデータを常時取り入れ「役に立つ情報か?」を判断しています。
しかし、脳には1度で処理出来る情報の量に限界があります。
脳が1秒でスキャン出来るオブジェクトの数は、30個程です。
そのような中、外界からの情報を全てインプットし、処理をしていたら、脳はオーバーヒートしてしまいます。
この問題を解決する為に、私達の脳は、不要なデータを次々と捨てるように進化してきました。
私達が金のなる木を見つけられないのは、1ドル札が視界に入ったとしても「木に1ドル札があるわけがない」と判断した脳が、すぐにそのデータを消したからなのです。
非注意性盲目は私達を情報過多から守ってくれる大事なシステムである反面、私達を幸運から遠ざけてしまう副作用も併せ持っています。
行動と多様を掛け合わせた人に対し、幸運は平等に舞い込みます。
違いは、その幸運に気付く事が出来るかどうかです。
スペンサーが「レーダーでチョコレートが溶けた」という偶然に対して「ただチョコレートが無駄になった」としか思わなかったら、現代に電子レンジは存在していなかったかもしれません。
行動と多様を掛け合わせる事が出来たのなら、次に身につけるべき能力は、洞察力です。