「外の女は格好いいところ担当で、私は馬鹿なところ担当だなんて、妻ってつくづく損なポジションよね。これ以上は無理って一度は思ったけど、やっぱり智也たちの父親だし、離婚は避けたいし、世間体も悪いし、そんなふうに思うわたしも馬鹿なんでしょうね。」
‥菜穂ちゃんの声色がしんみりしたものに変わった。
「そんなことないよ。」
「いいえ。争いは同じレベルの敵同士の間にしか起こらないって言うじゃない。」
「相手は敵じゃなくて、旦那さんだよ。」
「同じことよ。愛情と憎しみは表裏一体なの。」
「よくわからない。」
「わからないほうが幸せでいられるわ。でも、カズくんもいつかわかる。」
‥なんの予言だろう。しかし相手に怒りながら、同時に自分を批判し自省する。菜穂ちゃんはとても賢く寛容で、ややコンサバティブ寄りだが基本的にフェアな人であり、総合的に見て政治家の妻に向いている。それゆえ苦労するだろうと父が以前に言っていた。全面同意だ。
‥対する自分は人生経験もろくにない底辺コミュ障なので、「そうなの?」「そうだね」「そんなことないよ」とあいづちを打つだけだ。気の利いた慰めも出てこず申し訳ない。しかし菜穂ちゃんはそれでいいと言う。親に愚痴ると心配をかけるし、女友達に相談して同情されるのも嫌だ、それに情報はどこから漏れるかわからない。
「だからね、道端のお地蔵さんみたいに聞いてくれるカズくんに感謝してるの。」
「そうなの?」
「たったひとりで秘密を守る苦しさから逃れられるじゃない。」
『美しい彼番外編集』政治家である夫に何度も浮気をされている菜穂ちゃんと平良の会話です。
多くの人は、幸せに向かって生きています。
恋人も、家族も、仕事も、幸せの為にある事が理想です。
しかし、このシンプルな事を多くの人が見落としています。
そのせいで、相手の事を考えずに自分の話ばかり優先してしまったり、人の気持ちを傷つけてしまったり、相手の話を聞こうという姿勢を忘れてしまったりしてしまいます。
あなた自身が幸せに向かっているように、相手も幸せに向かって生きています。
その為、自分を傷つけようとしたり、否定してきたり、攻撃をしてくるような人の所からは、人は離れていきます。
これに対し、自分の心を明るい方向に導いてくれる人、自分を温かく迎えてくれる人、自分の話をきちんと聞いてくれる人の所に人は集まります。
そこで必要になるのが、聞く力です。
初対面の相手とコミュニケーションを取る時に、好かれようと考える人が多いです。
このアプローチで上手くいく事もありますが、さらに上手くいく方法があります。
それは、相手の不安をなくしていく事です。
人は、誰しも何らかの不安を抱えています。
相手に好かれようとたくさん話すより、その不安をなくす事を優先してみてください。
人は、不安な状態のまま心を開く事はありません。
まずは、相手の不安を安心に変える必要があります。
相手の不安を安心に変える事で「この人は安心出来る。話しても大丈夫かも。」と相手に思ってもらう事が出来ます。
相手の不安をなくす事を優先する。
聞く力を伸ばし、相手の不安をなくす事を優先する事を実践していく事で、あなたの元に人が集まってくる事を約束します。