誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ。たとえ、君が痛みに慣れているのだとしてもだ。君が傷つくのを見て、痛ましく思う人間もいることにそろそろ気づくべきだ、君は。

 

 「人と人とのつながりは、きっと麻薬だ。知らず知らずに依存して、そのたびにじんわりと心を蝕む。そのうち、他の人に頼らなくては、何もできなくなってしまう。」

 『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』比企谷八幡の言葉です。

 

 

 ウクライナでは、ロシアからの攻撃により、民間人を含めた多くの人が亡くなっています。

 東アフリカでは、数百万単位の人々が飢餓で苦しみ、多くの子ども達が短い人生に幕を閉じています。

 日本を含めた多くの家庭では、閉ざされたドアの向こう側で、DVや育児放棄、親の価値観の強要が行われています。

 

 こんなにも、世界は悲しく、辛く、残酷な事で溢れています。

 それなのに、あなたは、今日も暖かい布団の中から目覚め、朝食を食べ、嫌だと言いながらも会社に行く事が出来ています。

 こうした矛盾した状況に、どのように対処すればいいのでしょうか?

 

 あなたが、アメリカ大統領でもない限り、個人で、世界の矛盾に向き合い、出来る事はほとんどありません。

 否、アメリカ大統領でさえも、自分の能力を過信し、判断を誤り、頻繁に痛い目にあっています。

 戦争やテロ、貧困等の問題は、共感力の欠如でも、軍事力の欠如でも、知能の欠如でもありません。

 それらの問題は、皆が想像するよりも、問題の複雑さが度を越している事にあります。

 

 それでも、あなたが、世界の苦境を少しでも救いたいと願うのなら、寄付をしましょう。

 時間ではなく、お金を寄付しましょう。

 山手線の駅前で、貧困な地域への寄付を呼び掛けている人達を見かけますが、私はいつもこの人達の行動に疑問を感じています。

 あなたが、救急医のエキスパートや爆弾処理の専門家や世界で活躍する交渉人でもない限り、問題が起きている場所に向かうのはやめた方がいいです。

 ボランティアへの参加を有意義であると思い込んでいる人は多いですが、実際はボランティア活動には、ほとんど生産性がありません。

 

 あなたの時間を最も生産的に使う方法は、自分の能力の輪の中にある事を行っている時です。

 もしも、あなたがボランティアで、東アフリカにポンプを設置したとしても、地元の職人ならば、ほんのわずかな賃金で出来る程度の労働でしかありません。

 あなたがボランティア活動で設置出来る給水所は、1日に1カ所が限界です。否、おそらく1日1カ所も設置出来ないでしょう。

 しかし、あなたが自分の能力の輪の中で仕事をし、お金を稼ぎ、そのお金を地元の職人への支払いにあてれば、1日で新しい給水所が10カ所以上出来上がります。

 

 もちろん、ボランティア活動をすれば、充実感は得られます。

 ただ、大事なのは、あなたがどう感じるかではありません。

 熱心なボランティア活動を有意義であると思い込むのは、私達が陥りがちな思考の落とし穴です。

 現地のスペシャリスト達は、あなたのお金を、あなた以上に有効に使ってくれます。

 

 世界で起きている出来事は、あなたの責任ではありません。

 その事に、心を苦しめても、何にもなりません。

 それであれば、その時間を能力の輪を活かす事に使ったり、あなたの大切な人と過ごす時間に使ったり、あなたが時間を忘れ夢中になれる事に使いましょう。

 

 世界で起きている出来事は、あなたの責任ではありません。