賢人が目指すべきは、幸福を手に入れることではなく、不幸を避けることだ

 

 「あなたの才能の秘密を教えていただけないでしょうか?あなたはどのようにしてダビデ像を作り上げたのですか?」

 ローマ教皇が、ミケランジェロに尋ねました。

 「とても簡単です。ダビデではないものを、全て排除したのです。」

 ミケランジェロは、答えました。

 

 

 「どうすれば成功するのか?」という問いの答えは、誰にもわかりません。

 また「どうすれば幸せになれるのか?」という問いの答えも、誰にもわかりません。

 しかし、何が私達の成功や幸せを台無しにするのかは、誰もがはっきりわかるはずです。

 

 2019年主任介護支援専門員の研修中、講師が「あなたにとって幸せとは何ですか?」という質問を受講生にしていました。

 受講生は「家族といる事」「楽しい事をしている事」「大切な人と繋がっている事」等と答えていました。

 私は「不快ではない事」と答え、会場が静まり返った事を記憶しています。

 

 

 大切なのは、上記のシンプルな事実を認識する事です。

 「すべきでない事」は「すべき事」よりも、あなたの人生に対して、大きな影響力を持ちます。

 ミケランジェロのように、ダビデに意識を集中させるのではなく、ダビデでないものに意識を集中して、それらを排除していくのです。

 

 この考えが最初に提唱されたのは「神学」の分野です。

 神学では「神が何であるかは言い表せないが、何が神でないかははっきり言える」という「否定法」で神を語ろうとしました。

 現代に置き換えるのならば「何が成功をもたらすかは言い表せない。しかし、何が成功を妨げたり、台無しにするのかははっきりと言える」といった具合でしょうか。

 

 

 ウォーレン・バフェットは、自分自身とビジネスパートナーのチャーリー・マンガ―について、下記のように記しています。

 「私達は、ビジネスにおける難問の解決法を学んだわけではない。学んだのは、難問は避けた方がいいという事だ。」

 まさに、ここまで記してきた「否定の教え」そのものです。

 

 私達が、目指すべきは、幸福になる事ではありません。

 私達が、目指すべきは、不幸を避ける事です。

 

 「成功はアート。失敗は科学。」

 成功には再現性がありませんが、失敗には再現性があります。

 対策が出来る問題は、再現性のあるものです。