運動は、認知症発症率を減少させる

 あなたの行動を決めるものは、種々ありますが、最も大きな決定権を持っているもの、それは記憶です。

 あなたという人格は、記憶により、形成されています。

 シャツの色や、職業、住む場所に至るまで、あなたが決めることは全て過去の経験から得た記憶が選択の大きな比重を占めています。

 脳は、現在生じている事柄を、あらゆる過去の状況と照らし合わせて、最適解を見出しています。

 私達の人生は、記憶によって紡がれています。仮に、その記憶が消滅してしまえば、私達は別人になってしまいます。

 その別人になってしまう要素を含む病気が認知症です。

 昨日の夕食の内容が思い出せないことから始まり、最終的には家族の顔も名前も思い出せなくなることもあります。

 記憶する力がなくなるにつれ、その人はもはや以前の人格の陰のような存在になっていきます。

 この悲惨な病気を防ぐ為、製薬会社は認知症の研究に莫大な資金を投入し、新薬開発に挑んでいます。

 しかし、結果は出ていません。初期の認知症の症状の進行を緩やかにする薬は出ているものの、認知症の進行を防いだり、回復させるような薬は出ていないのが現状です。

 その一方、ほとんど資金を投入せずに、認知症の進行を防ぐ方法を科学者達は発見しました。

 その方法とは、運動です。

 毎日意識的に歩くだけで、認知症の発症率を40%減少させるという実験結果が出ました。

 この結果を、どのマスコミも取り上げないのは、そのような発表をしても、誰もスポンサーがつかず、市場を沸かせることもないからです。

 仮に、認知症の発症率を40%減少させる薬を開発出来たのなら、その開発者はノーベル賞を受賞したことでしょう。

 医学会もこの発見をあまり重要視しておらず、運動が認知症予防に繋がるということを伝える医師は稀にいても、そのロジックを説明する医師には出逢ったことがありません。

 身内に認知症の方がいた医師程、認知症の研究をする傾向があります。たしかに、認知症は遺伝的要因があることは確かです。

 しかし、実際は親から受け継いだ遺伝的要因は、身体を動かさないことに比べれば、大きな問題ではありません。

 鬱病、双極性障害、統合失調症等の精神疾患同様、認知症の最も効果的な薬も、運動です。