「ミヤアツムのサーブの時、足が床に張り付いて、なんか懐かしい気がしたんです。こわいって思う事が。」
…怖いって、ハッキリ言える事が凄えな…
「怖いが、懐かしいって何だろ‥?」
「さぁ。凡人にはわかんないデショ。」
「でも、じいちゃんが言ったんすよ。」
…夕坊、怖がる事の何が悪いかわかるか?…
…オトコラシクないから?…
「もったいないからさ。」
「西谷さぁ、わざわざ苦手なオーバーやんなくても、アンダーで捌けない事もないんじゃないの?」
「アンダーで全部取れるなら、それでいいと思ったし、できると思ってたんだよ。でも、もっと上が居る。選択肢が増えるってわかってて、やんないなんてつまんねえよ。」
『ハイキュー』西谷の言葉と、菅さん・山口・ツッキーの言葉、西谷の子ども時代の回想、そして、木下と西谷の会話です。
「幸運=(行動×多様+察知)×回復」
現代の運の方程式です。
今日は、多様の話を進めます。
イタリアに35歳のロメオという青年がいました。
ロメオは、故郷で機械工として起業を考えていましたが、資金が足りず、起業を諦めてしまいました。
そんな時、電車で偶然隣に座ったイギリス人と何気なく雑談を始めた事がきっかけとなり、彼の人生は好転します。
そのイギリス人は、機械の素材を扱う会社の役員であり、雑談の中でロメオが優秀な技術者である事に気づきました。
すると、そのイギリス人は、ロメオを同社のイタリア支店にスカウトしました。
大喜びで誘いに乗ったロメオは、イタリア支店で成果を上げ、経営にも関わるようになり、製造会社の買収も始めます。
1915年、自動車マニアが運営する企業を買収し、この会社に「アルファロメオ」と名前を付けました。
行動の量を増やしても、シンプルな試行回数だけでは、人生の成功に結ぶ付ける事は困難です。
カイザースラウテン大学が、世界中の6,000人以上のアスリートを対象に行ったメタ分析を用いて「スポーツの世界で成功するには、小さな頃から1つの競技に特化すべきか?」というテーマを調べた研究があります。
2歳からゴルフを始め、8歳でジュニア世界選手権を制覇したタイガー・ウッズ。
3歳から卓球のラケットを握り続けた福原愛。
4歳からフィギアスケート一本で技術を磨いた羽生結弦。
マイナースポーツにおいては、親の意向により、そのスポーツのみを半強制的に実施してきたトッププレイヤーの存在が目を惹きます。
このようなトッププレイヤーの存在は、特定の種目で試行回数を重ねる事の重要性を表しているようにも見えます。
ところが、分析の結果は異なりました。
実際には、世界レベルのアスリート程、10代のうちに、複数のスポーツに時間を使い、1つの種目に絞る時期が遅かったのです。
逆に、幼い頃から1つの種目に絞った選手は、ジュニアレベルでは成功を収めやすかったものの、成人後にはトップになれない傾向がありました。
上記のロメオのようなドラマティックな物語は珍しいですが、幸運に他者との関係性が、欠かせない事を示す研究は多数発表されています。
1979年、コロラド大学において、ニューヨークで活躍する写真家の成功要因を調査しました。
ニューヨークには、多数の写真家が活躍していますが、キャリアの成否には大きな差があります。
写真家として食べていく事が出来ない者がいる一方で、1億ドルを超す年収を稼いでいる写真家もいます。
このような成功レベルの違いは、どこから生じるのでしょうか?
調査の結果、成功した写真家とそれ以外の写真家の間には、1点だけ大きな違いが認められました。
♦成功者は、特定の人との繋がりは薄いが、多様な社会的ネットワークを持っている
♦非成功者は、特定の人との繋がりは深いが、多様な社会的ネットワークを持っていない
成功をしている写真家は、他ジャンルのアーティストや他国のキュレーターといった多様な関係者と交流をしていました。
しかし、それぞれの相手と深い友情を築くわけではなく、たまにパーティー等で言葉を交わす程度の関係性でした。
違う世界のアーティストと交流があれば新たなギャラリーを紹介される確率は上がりますし、他ジャンルのビジネスパーソンと関係を持てば仕事の幅が拡がる可能性が高くなります。
1つのスポーツや仕事・勉強ではなく、複数のスポーツや仕事・勉強をしていく。
1つの分野の人とだけ関わりを持つのではなく、自分の分野とは異なる人とも関わりを持っていく。
行動に、このような多様を掛ける事で、幸運の確率は上昇します。
…食わず嫌いしてたものを、やっぱり嫌いだと確認すること…
…敵意には、理由があるということ…
…自転車に乗れたら、どこまで行けるか…
「わからず終いは、もったいねえのさ。」
…それでも、こわかったらどうするの?…
「そんなの決まってんだろ。助けてもらう。」
再び、西谷の子ども時代の回想です。