鏡の中に、君を助ける答えはない

 

 

 「君のテストは、採点方法が間違ってる。」

 「人生が永遠に続くテストなら、得点は生きていく程に、増えていくはずなんだ。でも君は、つけたマルより、ついてしまったバツを数える。命に満点なんてないのにね。」

 

 「‥驚いたな。まだ僕にハッタリを?」

 「ハッタリじゃないよ。君の弱点の話さ。君は圧倒的に強者で、一分の隙もない教育者だ。でも君は、あまりにも世界を過信し過ぎている。」

 

 「全ての努力と誠実さが報われ、全ての善行と悪行が評価され、全てを守れば、完全に立派な大人になると信じている。世界が満点を保証してくれる。そう考えるくらい世界が完璧だって疑わない。」

 「だから、思いもしないんだ。たかが温度差で、世界が壊れてしまうなんてね。」

 

ジャンケットバンクの教師回よかったぜメモ|gushagen

 

 『ジャンケットバンク』真経津の言葉と眞鍋の言葉、そして、再び真経津の言葉です。

 

 

 

  ☆リンダという女性がいます。

  ★彼女は、31歳で独身です。

  ☆彼女は非常に聡明で、はっきりと自分の意見を主張する性格です。

  ★大学では哲学を専攻し、人種差別に強い興味を持ち、反核運動にも参加していました。

 

 

  ♦リンダは、どちらに当てはまるでしょうか?

 

   ①リンダは、銀行の窓口係である

   ②リンダは、フェミニズム運動に熱心な銀行の窓口係である

 

 

 上記の問題は「リンダ問題」と呼ばれ「心理学」「行動経済学」の分野において、よく知られている問題です。

 

 そして、多くの人が、リンダは②フェミニズム運動に熱心な銀行の窓口係であると答える事でも、知られています。

 しかし、可能性が高いのは①銀行の窓口係です。

 冷静に考えれば②フェミニズム運動に熱心な銀行の窓口係は、①銀行の窓口係に含まれる為であるから、当然の結果である事に気付きます。

 

 

 複数の条件を同時に満たす事の方が、1つの条件を満たす事よりも起こりやすいと誤って判断をしてしまう事を「連言錯誤」と呼びます。

 また、リンダのプロフィールからは、一般的に思い浮かぶフェミ二ストの典型的な特徴を読み取る事が出来ます。

 ある事例は、特定のカテゴリーの代表的な特徴を、どの程度備えているかを基にして、その事例の起こりやすさを判断する方法を「代表制ヒューリスティック」と表現します。

 

 上記のように、人は多くの事象において、誤った判断をする事が多いものです。

 

 

 

  ♦冷静に考えるとわかる事なのに、判断を誤る

 

 これが、人の常です。

 人とは「非合理な意思決定」ばかりをしてしまう生き物である。

 その「非合理な意思決定」を前提に「経済」を考えるという学問が、昨今注目されている「行動経済学」です。

 

 

 

 「自分の生まれた村を、より良くしたい。」

 私が所属していた大学のゼミにおいて、その中の1人が地元の役場に就職を決定した時に、言っていた言葉です。

 

 教員を含め、皆、上記の言葉に感動していましたが、私は、皆が感動する事は理解出来るものの、何故それ以上の疑問を抱かないのかが不思議でした。

 意見を求められた私は「1度もその村から出ていないのに、どのように良くという曖昧な事を評価するの?」と質問をしましたが、誰も、この質問の意味が理解出来ていない様子でした。

 その時「自分の居場所は、ここではない」と強く思った事を、記憶しています。

 

 

 

 …市場経済において、各個人が自己の利益を追求すれば、結果として社会全体において、適切な資源配分が達成される…

 

 …人間には、様々な激情があるが、共感する力がある。義務と道徳を知れば、正しい行動ができる…

 

 現在の経済学の基本とされているアダム・スミス著『国富論』『道徳感情論』の一説です。

 

 

 また、アダム・スミスは、仮に市場経済に偏りが生じても「神の見えざる手」が働き、上手く調整されるとも主張しています。

 このような考えを持つ「経済学の父・アダム・スミス」の考えを受け継いだ経済学者達も、ある間違った前提の下、経済学を紡いでいきます。

 

  ♦市場メカニズムの中で動く人も、常に理性的で正しい判断をする

 

 

 しかし、アダム・スミスが『国富論』を発表した18世紀であれ、現代であれ、時代を通じて、市場経済は完全に合理的ではないという事は、あなたも経験的に感じているのではないでしょうか?

 理由は、至ってシンプルです。

 

  ♦市場経済の中に、人という「非合理な存在」がいるから

 

 さらに、残念ながら、全ての人が、義務と道徳を持ち併せているわけでもありません。

 人が冷静に考えるとわかる事なのに、間違える存在である事は、先の事例通りです。

 

 

  ♦合理的な個人を前提とする伝統的な経済学には、限界がある

 

 この仮説を下に、人を「非合理な意思決定」をする存在である事を前提に「経済学」に「心理学」を融合させた学問が、昨今注目されている「行動経済学」です。

 

 

 

 「ゲームは、全行程の半分を終え、僕達は十分に歳を取った。ここまで来ると、嫌でも感じる。幸福や勝利に必要なのは、迎合や妥協ではなく、強い意思と、それを実現する能力だったと。

 「だが悲しいことに、人は大事なことに、いつも遅れて気づくものだ。生まれ持った熱が冷め始め、無限の可能性が、無限に消えた後で、やっと焦る。」

 

 「君は、自分の室温をこれ以上下げられないこの状況下で、同時に僕を殺す手段を実行しなければならない。だが、正直に言おう。一発逆転を狙うのは、落第者の典型だ。

 

ジャンケットバンクの教師回よかったぜメモ|gushagen

 『ジャンケットバンク』眞鍋の言葉です。

 

 

 では「行動経済学」は、どのように、あなたの生活に関係しているのでしょうか?

 実は、オバマが2度目の大統領選に勝利した背景にも、アメリカ企業が自社の年金制度加入率を上げた背景にも、「行動経済学」を使った秘策が、隠されていました。

 

 この続きは、また後程。