「ーん?オイ…このメシ作ったの、どこの誰だ?」
「…あらヴァナタ中々違いがわかる男ね。」
「…味もいいが、妙に力が漲る様だ。」
「これは攻めの料理。これを作るシェフは島に何人もいるわ。世界中の人間が100%毎日ミルクを飲めば、世界から犯罪が消えるって…信じる?見て、この島のキャンディたちの強靭な肉体美。優しい心。食事は、環境・体格・性格・人体の全てを作り上げるもの。攻めなきゃ損。」
…料理で体を作る?ーそんな考え方した事がなかった。毎日のメシで、あいつらの体作りの補助ができるのか…
『ONEPIECE』サンジとイワちゃんの会話です。
現在、自閉症(ASD)の有病率は44人に1人、注意欠陥多動性障害(ADHD)の有病率は10人に1人とされています。
また、文部科学省が2012年に行った調査においては「学習面または行動面で著しい困難を示す」とされた小学生・中学生の割合は、6,5%であったとされています。
つまり、30~40人学級の中で、発達障害を疑う可能性が高い生徒が、2~3人いるという事になります。
2000年にはASDの有病率が150人に1人だった事を踏まえれば、現在において上記の行動を示す小学生・中学生の割合は、現在もっと増加している事が想像出来ます。
現在、発達障害は、3つに分類されています。
①自閉症(ASD)②注意欠陥多動性障害(ADHD)③学習障害(LD)という分類です。
私の印象では、③学習障害に該当する人は少なく、①ASD3割②ADHD4割、他の3割は診断がついていないグレーゾーンの人という感じです。
これまでの発達障害の研究では、発達障害の特性は、脳の機能に偏りがある為であると考えられてきました。
もちろん、それは正しいのですが、近年の研究では、腸内フローラが発達障害の症状に影響を与えているのではないかという論文が多数発表されています。
ヒトの腸内には、1,000種・1,000兆個の腸内細菌が生息しているとされています。
これらの腸内細菌は、栄養の吸収を助けるだけではなく、タンパク質やビタミンの合成・病原菌の侵入防止・ホルモンに影響を与える等、身体を維持する為に重要な役割を担っている事がわかってきています。
腸内細菌が、ホルモンに影響を与えているという発見は、これまでの生物や解剖生理学の歴史を引っ繰り返すような発見です。
また、最新の研究では、腸内細菌は脳の機能にも大きな影響を与えている事がわかっています。
脳と腸の関係性が明らかになってきた事で、脹の問題が精神疾患の原因となっている事を裏付ける研究が盛んになってきています。
2016年に国立精神神経医療研究センターが行った研究では、腸内細菌の善玉菌が少ないと、鬱病のリスクが高い事が証明されました。
アリゾナ大学の研究では、ASDの症状を持つ子どもの3割~5割が下痢や便秘等の症状を抱えており、さらにASDの状態は腸の状態と相関関係がある事が証明されました。
アリゾナ大学の研究チームは、ASDの症状を持つ18名の子どもに対し、腸内細菌移植を行いました。
被験者となったASDの症状のある18名の子ども達に、腸内洗浄を行い、健康な人の腸内細菌を投与したのです。
すると、治療後からASD特有の行動症状が減少し、腸内環境も多様な菌が増えて、下痢や便秘の問題も解決していきました。
さらに、治療2年後の追跡調査では、ASDの症状が45%減少したという報告もされています。
日本においては、腸内細菌移植は臨床研究が開始されたばかりで、診療出来る施設は数カ所しかなく、保険適用もされていません。
有効な治療方法が中々無かった発達障害に対し、腸内細菌移植が新たな希望の光となる事を願います。