「人類について研究している変わり者の魔族がいると聞いた。お前がそうか?」
「ええ。ソリテールよ。」
「マハトだ。」
「見るのは初めて?」
「ああ。海には、こんなに大きな魚がいるんだな。」
「そう。やっぱり魚に見えるんだ。」
『葬送のフリーレン』マハトとソリテールの会話です。
♦空を捨てた鳥達の物語
鳥というと、誰もが、空を飛ぶ姿を、想像するのではないでしょうか?
しかし、鳥の中にも「飛べない鳥」否「飛ばない」事を選択した鳥がいます。
☆ダチョウー地上で走りを極める
★ペンギンー空から海へ
☆ニワトリー重量オーバー
現在、鳥類は、1万種存在します。
その中で、60種が「飛べない鳥」として知られています。
これらの鳥類も、皆「空を飛ぶ共通の祖先」から派生してきています。
つまり「飛べない鳥」達も、昔は空を飛んでいたのです。
「これは‥。」
「骨格標本。」
「さっきの魚の物か?」
「片方はね。骨格が全然違うでしょ?」
「収斂(しゅうれん)進化という言葉は知っている?」
「‥いいや。」
「この言葉なね、魔王様が教えてくれたの。」
『葬送のフリーレン』マハトとソリテールの会話です。
♦鳥は、飛ばなくていいのなら、飛ぶ事をやめたい
「飛べない鳥」には、ダチョウ・ペンギン・ニワトリ等の他に、カモの仲間やオウムの仲間もいます。
現在は絶滅してしまいましたが、かつては、スズメの仲間やハトの仲間にも「飛べない鳥」がいました。
鳥は飛ぶからこそ生存競争に勝ってきたにも関わらず、どうして、これ程までに様々な種類の鳥達が、空を飛ばなくなったのでしょうか?
☆敵から逃げやすい
★食料を求めて移動しやすい
☆繁殖を求めて移動しやすい
「飛ぶ」能力がある事は、上記の点で、生存競争に有利に働きます。
ただ、どんな事にもメリットがあれば、デメリットもあるもの。
鳥は「飛ぶ」能力を維持する為に、非常に大きな代償を払っています。
大胸筋等の「飛ぶ」事に関わる筋肉群を合計すると、全体重の30~40%にもなります。
人の大胸筋が体重に占める割合が、0,5%~1%であるのと比較すると、鳥の大胸筋の異常さが、わかります。
さらに、現代の飛ぶ鳥の殆どが、体重1㎏以下の鳥です。
鳥は「飛ぶ」為に、見た目以上に、体重が軽いのです。
鳥は、アスリートのように、大きな筋肉を維持しつつも、身体全体としては厳しい体重制限をクリアしていないといけないのです。
これに加え、鳥は「風切羽(カゼキリバネ)」を1年に1度生え変わらせる必要があり、毎年新しい羽を作る為に、相当のエネルギーを投入しています。
これらの理由から、鳥類学者の中には「鳥は、飛ばなくいいのなら、飛ぶ事をやめたい」と主張している人がいます。
1度「飛ばない」事を選択した鳥は、大きく、重たくなっていきます。
世界で唯一の「飛ばない」オウム類の「フクロウオウム」は、体重4㎏に達し、世界で1番重いオウムになっています。
「あっちが魚類で、こっちが哺乳類。こっちの子の祖先はね。元々陸の生き物だったの。」
「それが海で暮らし初めて、長い長い年月が経って、やがて大きな魚とそっくりな見た目になってしまった。」
「この子達はね。同じような姿をしているのに、全く別の生き物なの。面白いでしょ?」
『葬送のフリーレン』ソリテールの言葉です。
♦水中を飛ぶ鳥ーペンギン
ダチョウ等の「走鳥類」の祖先が分岐しつつあった6,600万年頃、時を同じくして、ある鳥が、空を捨てて、海へ進出していきました。
これが「ペンギン類」の祖先です。
「翼が退化した走鳥類」とは異なり「翼が進化した飛べない鳥」が「ペンギン」です。
「ペンギン」は、空を飛ぶ鳥が、空気から揚力を得るのと同じ原理で、水から揚力を得て、水中を移動します。
これらの事から「ペンギン」は「海を泳ぐ」のではなく「海を飛んでいる」のです。
ペンギンの身体は、水という空気の800倍も重い流体の中を移動する為、翼は短くて幅広の骨からなる「フリッパー」という構造になっています。
「フリッパー」の構造により「ペンギン」は、水中で推進力を得やすくなっています。
この構造により、ペンギンは、水深500m以上の深海にまで「飛んで」いけるようになりました。
また、胸骨と竜骨突起が発達している事も、特徴です。
その一方、二頭筋等の何種類かの筋肉はなかったり、痕跡が残るだけになっています。
戦国:信長→秀吉→家康
幕末:吉田松陰→坂本龍馬→大久保利通
今シーズンのパリにも代表されるように「ペンギン」が水中に特化した鳥になるに至る過程にも、3つの過程があります。
①空を飛べるが、潜水出来ない
②空を飛べて、潜水も出来る
③空は飛べないが、潜水が出来る
長い年月を掛けて、数え切れない程の失敗と経験を経て「ペンギン」は、現在の姿に進化してきたのです。
この証拠に、水中に進出した鳥は、ペンギンだけではない事が、わかっています。