でも、小さかろうが大きかろうが、技術を磨いた奴が技術を持っている。世界は平等じゃなくて、平等だ2

 

 「…俺は、中学でも高校でも県内ではそこそこ通用してたと思います。エースっていう自信もありました。でも、全国で上へ行けば行く程、相手はより大きく・より速く・より賢かった。俺は小さい代わりに技術で勝負するんだって思ってました。でも、小さかろうが大きかろうが、技術を磨いた奴が技術を持っている。世界は平等じゃなくて、平等だ。それを星海(あいつ)は、とっくに。」

 『ハイキュー』元小さな巨人の言葉です。

 

 

 誰もが、1度は鳥のように、空を飛んでみたいと思った事があるのではないでしょうか?

 しかし、私は鳥達は飛ばなくていいのなら、飛ぶ事をやめたいと考えていると思います。

 

 現在、1万種の鳥類が地球上に生息しています。

 その中で、60種程が飛べない鳥として知られています。

 ただ、飛べない鳥達も、祖先を辿れば、共通の空を飛ぶ鳥類のグループから派生してきました。

 つまり、飛べない鳥達も、祖先は空を飛んでいたのです。

 

 

 ニワトリ、ダチョウ、ペンギン等、飛べない鳥は、大きさも、生息地も、見た目も、様々です。

 では、彼ら彼女らは、どうして飛ばないという道を選択したのでしょうか?

 飛ぶ事・飛翔能力があれば、敵から逃げやすく、海や山を越える事が出来る為食料を得やすい為、生存競争に有利なように思います。

 ただ、鳥は飛翔能力を維持する為に、非常に大きな代償を払っています。

 

 大胸筋等の飛翔に関わる筋肉群を合計すると、全体重の30~40%を占めます。

 また、現生の飛ぶ鳥の殆どが、体重1㎏以下です。

 大きな筋肉を維持しながらも、身体全体としては厳しい体重制限をクリアしなければならないという、アスリートのような悩みを鳥達は持っています。

 これに加え、鳥は風切羽を1年に1度生え変わらせており、新しい羽を作る為に、相当のエネルギーを費やしています。

 

 その影響か、1度飛ばなくなった鳥達は、大きく、重くなっていきます。

 最大の鳥類はダチョウですし、世界で唯一飛ばないオウムであるフクロウオウムも世界で1番重いオウムです。

 飛ばないという選択をすると、アスリートのような生活から解放され、鳥達は、大きく、重くなっていきます。

 

 

 その一方、やはり飛ばないという選択をした事によるデメリットも存在します。

 飛べない鳥の多くは、絶滅危惧種や絶滅種が多いのです。

 飛べない鳥は、競争相手のいない楽園にあってこそ誕生し、繁栄してきたのです。

 

 そして、その楽園を荒らしたのが、人類です。

 飛べない鳥は、飛ぶ事が出来ないだけではなく、硬い甲羅も、速い足も、鋭い牙も持ち合わせていなかった為、人類の恰好の標的となりました。

 

 ヨーロッパの人々が船で続々と旅立った大航海時代の1600年以降、絶滅の速度はさらに早まりました。

 モーリシャス島に生息していたドードーは、島が発見された1507年から200年程で絶滅してしまいました。

 人類が世界中に拡散する以前の時代には、現在の2~5倍の鳥類が生息していたと考えられています。

 

 多くの飛べない鳥が絶滅してきた事を考えると、現在も生き残っている飛べない鳥の存在は、奇跡のようなものです。

 6600万年以上に及ぶ地球と生命の歴史が生んだ奇跡の物語。

 それが飛べない鳥達の進化の物語です。

 

 

 …自分より大きいものや、強いものに出会って初めて、自分は小さく弱いと自覚する…

 「俺は、俺が弱い事を、とうの昔にしっている。」

 『ハイキュー』星海の言葉です。