伝説とは奇跡の瞬間ではなく、諦めなかった時間のことを呼ぶ4ー完璧なドラマの続編、リオネル・メッシ





 

  ♦彼が残したのはゴールではない。世界中の子どもたちが、ボールを蹴る理由だ

 

 

 

 ーー少年は、小さかった。

 

 世界の基準では、あまりにも。

 

 

 医師は「このままでは成長できない」と言った。

 

 少年にとって、サッカーは、夢だった。

 

 しかし、夢には金が掛かり、未来は保証されていなかった。

 

 

 

 それでも、少年は、ボールを蹴り続けた。

 

 まだ、誰にも見られていない頃から、ずっとーー。

 

 少年は、ボールと自分の足だけが知っている時間を、積み重ねていった。

 

 

 やがて、少年は海を渡る。

 

 家族と共に、人生を懸けて。

 

 紙ナプキンに書かれた1枚の約束。

 

 その約束は、1人の選手とチームとの契約ではなく、やがて、サッカーの希望を、否、人生の希望を、世界中の子ども達に届ける扉となるーー。







  ー小さかった少年は、大きな身体を手に入れたのではない。世界の時間を動かす力を、手に入れたー



 私が思う最強の魔法は、時間を操る「時間魔法」です。

 私の中での10番とは「時間魔法」を操る事が出来る選手です。


 10番は、速くプレイしません。

 10番とは、速くプレイする選手ではなく、試合全体の時間を支配する選手の事を呼びます。



 メッシのドリブルは、相手を抜く為ではないーー

   
   ☆相手を自分の所に、集める

    →集まった瞬間、仲間の前から敵は消える


   ★メッシが支配しているのは、ボールではない

    →仲間が前を向ける「時間」と「景色」である








 ーーメッシを世界一にした国は、アルゼンチンかもしれない。

 けれど、メッシをメッシにした国は、スペインだった。




 スペイン。

 その国は、少年の身長ではなく、少年の才能を見た。

 「何cmなのか」ではなく「何が見えているのか」を、信じた。



 少年に成長ホルモンを与えたのは、医学だったかもしれない。

 けれど、メッシをメッシにした栄養を与えたのは、スペインのサッカーだったーー。







  ー10番は、ボールを前へ運ぶのではない。時間を、未来へ運んでいるのだー



 普通の選手は、空いているスペースにドリブルをします。

 99%の指導者も、そう教えます。



 しかし、メッシは逆です。

 敢えて、相手が密集している場所へ入っていく。何故ならーー


   ☆敵が、1人来る

   ★敵が、2人来る

   ☆3人目も、カバーに来る


 ーーその瞬間、他の場所では数的優位が生まれます。



 「時間魔法」を操る事の出来る10番のドリブルの目的は、突破する事ではありません。

 「時間魔法」を操る事の出来る10番のドリブルの目的は「相手の守備を動かす事」にあります。


 





 ーーシャビがいた。イニエスタがいた。

 彼らは少年に、仲間を活かし、相手を動かし、時間を支配するという、サッカーの美しさを教えた。




 それが今、活きている。

 39歳になったメッシは、昔みたいに1人で何人も敵を抜き去ることはできなくなった。


 敢えて敵が集まる場所へ、入っていく。

 自分に相手の視線が集まることで、仲間に自由と景色を、手渡す。




 その左足には、アルゼンチンの情熱だけが宿っているわけではない。

 スペインで少年から青年、1人の男になった時間が、今も刻まれているーー。







  ーボールが旅をするたび、景色は変わる。景色が変わるたび、時間は生まれるー



 メッシのパスは、味方へ届ける為にあるわけではありません。

 もう1度、相手の首を振らせる為にありますーー。


    ☆中央から右へ

    ★右から左へ

    ☆足元から裏へ

    ★守備が一斉に振り返るしかないセンタリング


 ーーボールが旅をする度、相手の景色は変わります。




 その景色の変化が、1秒の余白を生み出します。


 10番は、ボールを動かしているのではありません。

 10番は、相手の視線を動かし、時間を生み出すのです。







 ーーだから私は、夢を見る。


 ワールドカップ決勝で観たいのは、現在のスペインとアルゼンチンではない。

 2010年のスペインと、現在のアルゼンチンである。



 それは、ただの決勝戦ではない。

 1人の少年を信じた国と、その少年が世界一へ導いた国との再会だ。


 かつて世界は、彼の身長を測った。

 しかし歴史は、彼が動かした人の数を記憶したーー。




 


  ー過去と、現在の邂逅。スペインとアルゼンチン、メッシとバルサー



 メッシがボールを持つと、守備は彼を止めようとします。

 しかし、その瞬間に奪われているのは、ボールではありません。


 彼らが奪われているのは、自分達の時間ですーー。


    ★視線が、揺れる

    ☆身体が、揺れる

    ★判断が、揺れる


 ーーその視線・身体・判断の往復が、守備から「一瞬」を奪います。


 そして、その「一瞬」が、味方に「時間」と「景色」を、プレゼントします。

 




 ーーそれは、1人の少年を育てたサッカーと、その少年が世界へ返したサッカーが出逢う最後の物語であるーー。