「俺は、何も学年の300人全員東大専門コースに来てほしいなんて思っちゃいない。来るのはせいぜい1人か2人。それで十分だ。」
「逆にいうとやってみようと思い立ち、実際に行動するヤツは‥集団の中で1人か2人しかいないということだ。」
「それ以外は、なんだかんだ理由をつけてやらない。グズグズしているうちにやる気を失う。そんなヤツらは、相手にしない。俺が待っているのは、1人や2人の動くヤツだ。」
『ドラゴン桜』桜木の言葉です。
教育から得られる利益-教育に支払う費用=子どもが将来得る事が出来る収益
投資を考える時、誰もが「収益率」を考えます。
教育を投資という視点で見た場合も同様で、親が、子どもに対する教育に投資をする時には「収益率」を考慮する事は、当然の思考となります。
そして、教育を投資という視点で見た場合、親が出来る事は「収益率」を最大化する事にあります。
勿論、子どもに教育を受けさせる理由は、金銭的な動機に限られません。
しかし、その場合も、たとえば「学びを得る喜び」等も「収益」に含めればいいのです。
では、子どもの教育にお金や時間を掛けるとしたら、いつがいいのでしょうか?
最も「収益率」が高いのは、子どもが小学校に入学する前の幼児教育です。
何故、就学前の幼児教育の人的資本投資の「収益率」は、高いのでしょうか?
この答えは、至ってシンプルです。
人生の初めの段階で得た知識は、その後の教育の役に立つからです。
算数・数学に例えるのが、わかりやすいでしょうか。
九九が出来ないと因数分解は出来ず、因数分解が出来ないと微分積分も出来ません。
シカゴ大学のヘックマンが行った「ペリー幼稚園プログラム」と呼ばれる就学前教育プログラムがあります。
★幼稚園の先生は、修士号以上の学位を持つ児童心理学の専門家に限定
☆子ども6人を、1人の先生が担当するという少人数制
★午前中に2,5時間の読み書きや歌を中心としたレッスンを週に5日、2年間受講
☆1週間に1回、1,5時間家庭訪問をし、親にも学びの機会を提供
低所得のアフリカ系アメリカ人の3~4歳の子どもを対象に、上記の質の高い就学前プログラムを実施しました。
「ペリー幼稚園プログラム」では、入園資格のある子どものうち、ランダムに選ばれた58人の子ども(処置群)と、65人のランダムに選ばれなかった子ども(対照群)を比較するという研究手法をとっています。
この研究は、対象者が少ないものの、その後40年間もの間、追跡調査が行われた事で、現在においても、私のように多くの人が引用をしています。
☆6歳時点のIQ → 高い
★19歳時点での高校卒業率 → 高い
☆27歳時点での生活保護受給率 → 低い
★40歳時点での所得 → 高い
☆40歳時点での逮捕率 → 低い
「ペリー幼稚園プログラム」にランダムに選ばれた子ども(処置群)には、ランダムに選ばれなかった子ども(対照群)と比較し、上記のような特徴がみられました。
就学前の幼児教育に参加した子ども達は、6歳時点でのIQが高かっただけではなく、その後の高校卒業率や所得が高くなり、その一方、生活保護受給率や逮捕率も低かったのです。
就学前の幼児教育には、子どもが大人になってからも、長期に渡り効果が持続する事が、証明されたのです。
就学前の幼児教育への支出は、雇用や生活保護の受給、逮捕率等にも影響を及ぼします。
この事から、就学前の幼児教育を受けた子どもやその親だけではなく、社会にとっても良い影響をもたらすのです。
このような社会全体へのポジティブな影響を、ヘックマンは「社会収益率」と呼びました。
「ペリー幼稚園プログラム」の「社会収益率」は、年率7~10%にもなると、推計されています。
「社会収益率」が7~10%にもなるという事は、4歳の時に投資した100円が、65歳時点において6,000円~30,000円にもなり、社会に還元される事を意味します。
幼児教育には、これ程の、社会への影響があるのです。
政府が、雇用保険の給付や生活保護の抑制、犯罪抑止等に、小手先の政策に多額の支出をするよりも、幼児教育に財政支出をする事の方が、見返りの良い投資であると考える事が出来ます。