幻覚ヒーロー

 20歳の時、友人と広島・山口を旅しました。  途中で下関に立ち寄り、友人と高校時代から影響を受けていた作家の講演会に参加しました。  会場に到着し、トイレに立ち寄るとそのトイレにその作家が入ってきました。  そこで私は、「午前中に原爆ドームに行き被爆者の方の話を聞きました。いい経験ができましたよ。」と友人に話すかのように高校時代のヒーローと話をしていました。  作者も気さくに話をしてくれた記憶があります。  これを振り返ると、20歳の私には作者はヒーローではなくなっていたのではないかと感じます。  高校時代、この作者から受けた影響は大きく、作者の本をワクワクしながら読んだことを覚えています。  私が毎回作者の本を注文や購入し、または友人にも勧めたりプレゼントしたりしていた為、私の故郷の小さな本屋には一時期作者のコーナーが設けられていました。  高校時代に感じた活字を読みワクワクするといった体験は、以降数えるほどしかありません。読書の楽しさを教えてくれたのも作者であると感謝しています。  しかし、様々な経験や知識を得ることでヒーローは変化していきます。  過去のヒーローの魅力が落ちたわけではなく、お互いに別の道を進んでいるだけです。  また、どこかで道が交わるかもしれません。  私は、作者のような過去のヒーローを幻覚ヒーローと呼んでいます。  幻覚ヒーローを複数持つことで人生の道は開いていくような気がしています。