…あれから夏帆は、部活にも、学校にも、来なくなった…
「‥もしもし。」
「夏帆‥!」
「‥ごめんね。ずっと連絡無視してて。」
「ううん全然!!今話せる?」
「あのさ、たまき‥あたし部活辞めるわ。」
「なんで‥?」
「なんでって‥あたしボーカルもヘタクソやしさ。あたしが歌う必要も別に無いかなって。なんか色々疲れたし‥。」
「そんなことない!!私は、夏帆とバンドやりたい!!だから、辞めるなんて言わないで‥。」
「‥ありがとう。優しいなあ、たまきは。バンド組んでたときも、いつも、あたしの意見尊重してくれて、あたしのやりたい曲ばっかりやってたし。でも、これからは自分のやりたいようにやらなあかんで。せっかくバンドやるんなら、もっと自己主張せんと。」
「喜田のバンドも解散するらしいから、一緒にバンド組んだらいいち思う。ふたりは、音楽の趣味も合うわけやし‥。」
『ふつうの軽音部』夏帆とたまきの会話と夏帆の言葉です。
♦いかなる攻撃を受けても、炎と共に再生する
…昔、インドにジャカナ王とアシュタバクラという大臣がいました…
…王様がアシュタバクラに意見を求めると、いつも「王様、起きた事は全て最高でございます。」という返答が返ってきました…
…ある日、王様が指に怪我をしました…
…それでも、アシュタバクラは「起きた事は全て最高です。」と言った為、他の大臣達は、その事を王様に報告し、王様はアシュタバクラを牢屋に入れてしまいました…
…翌日、狩りに出掛けた王様は、人食い部族に捕らえられてしまいました…
…王様は、身ぐるみをはがされ、木に縛られ、火あぶりにされる事になりました…
…その時、人食い部族の1人が、王様の指に傷がある事に気付きました…
…この人食い部族は、部族以外の人を捕らえると、火あぶりにして、神様への捧げものにするという伝統がありました…
…ただ、神様への捧げものに、傷があってはなりません…
…こうして、王様は、間一髪の所で、解放されました…
…宮殿に戻った王様は、アシュタバクラを牢屋から出して、謝りました…
『ジャナカ王とアシュタバクラ』のお話です。
この話の主題は「過去に起きた出来事を、どのように捉えるのが良いのか」という事です。
過去に起きた出来事の中で、良い事でも悪い事でもない、中間の出来事は、あなたの記憶から消えています。
あなたが覚えているのは、良い出来事か、悪い出来事かの、どちらかではないでしょうか?
「夏帆、あいつさぁ‥中学のときも不登校やった時期あってさ。昔から不安定なところがあって‥高校では中学みたいにならんようにって、無理してたんかもしれんなぁ‥。」
「私、夏帆のこと、何も知らなかった‥。」
「たまきが、何も知らんのは、当たり前やん。」
ーそれから、しばらくして、夏帆が高校を辞めて、通信制の高校に転学するという噂が流れ始めたー
「‥知ってる?夏帆が学校辞める理由。実は、たまきと揉めてたらしくて‥。たまきが喜田くんと一緒にバンドやりたくて、邪魔になった夏帆にいろいろ嫌がらせしてたんやって。」
「マジ?たまき、最低なん。」
「ああいうタイプの女が、裏では、一番性格悪かったりするよなぁ。」
「まあ、あたしら、もう部活辞めるし、どうでもいいけど。」
…根も葉もない噂の出所が、一緒にバンドを組んでいたメンバーだとわかったのは、2人が部活を辞めたあとだった…
…2人とも夏帆がいなくなった寂しい気持ちを、どこかにぶつけたかっただけだと思うから、私は、怒るよりも、ただ悲しくなった…
『ふつうの軽音部』喜田とたまきの会話、根も葉もない噂、そして、たまきの脳内言葉です。
良い出来事は、あなたの宝物だから、いつでも取り出せるような場所に保存してあります。
そして、時々取り出して、良い出来事を思い出して、元気な気持ちになります。
難しいのは、悪い出来事との付き合い方です。
まず、前提として、あなたに起きた悪い出来事自体を変える事は、出来ません。
変えられないのだから、その出来事自体は、受け入れるしかありません。
あなたに出来る事は、過去の悪い出来事に対する見方を変える事です。
「あたしが学校辞めたせいで、たまき、部活に居づらくなってたりせん?ほんまに、ごめんな‥。」
「ううん。それは‥大丈夫。」
「あたしな、ほんまに性格終わってるから、ずっと、たまきに嫉妬しててんな。喜田とたまきが、どんどん仲良くなっていくのが、気に入らんくて‥。あたし、最低なことしそうになって‥。」
「あっ‥でも別に、高校辞めるのは、たまきが原因じゃないから!元々集団生活に向いてなくてさ‥高校では頑張ろうって無理してやってたんやけど‥ほんまに迷惑かけてごめん‥。」
「そんな迷惑なんて‥。」
「短い間やったけど、たまきと、バンドやれて楽しかったわ。私のことは、もう忘れて、たまきは‥。」
『ふつうの軽音部』夏帆とたまきの会話です。
望ましくないのは、何かにつけて、過去の悪い出来事を思い出し「あれさえなかったらなー。どうしてああなってしまったんだろう」等という世界観です。
勿論「起きた事は、全て最高である」等と思う事は出来ませんし、そう思う必要もありません。
ただ「そういう考え方もあるかもね。そういう事にしておこう」等という程度で良いので、ひとまず、あなたの過去を受け入れてみましょう。
この続きは、また後程。