独居の老人が風呂場で孤独死。発見が遅れれば、事故物件確定だ

 

 

 「脅したんじゃないってことは、わがった。でも、要は高い家を売って、儲けたいだけでしょ?」

 「そ‥それもありますけど、断熱性の高い家に住むメリットは大きいんですって。光熱費が安くなるだけじゃない。QOLが確実に上がる。」

 

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 「断熱がQOLを?」

 「冬の朝、布団から出られなかったりしません?睡眠の質が上がったり、風邪を引く回数が減ったり、いいことづくし。」

 

 「何より、命にだって関わります。吉田兼好の責任がデカいですよ。」

 

  『正直不動産』榎本と永瀬の会話です。

 

 

 

  ♦毎年1万9,000人が、入浴中に亡くなっている

 

 私が担当している高齢者の中でも、冬の時期になると、入浴中に急死する人がいます。

 

  ★入浴中の急死者:年間約19,000人

  ☆交通事故死:年間約3,000人

  ★餅による窒息事故死:年間約300人

 

 驚くべき事に、入浴中の急死者数は、交通事故死の約6倍も、多いのです。

 また、入浴中の急死者の95%が65歳以上、特に75歳以上の高齢者が多い為、高齢者だけにフォーカスすると、入浴中の急死は、いつ・誰に起こっても不思議なものではありません。

 

 

 

 「つれづれなるまゝに?」

 「ええ。兼好は『徒然草』でこう言っています。家は、夏を考えて造れ。猛暑の欠陥住宅はヤバい。冬は、住もうと思えばどこでも住める。」

 

正直不動産 | 「嘘ついてなんぼのイカレた世界・・・それが不動産の営業だ」 「嘘がつけなくなった」不動産営業の悲惨な末路 漫画「正直不動産」(第1巻  第1話) | 東洋経済オンライン

 

 「たしかに、1910年代まではー夏と冬では、夏のほうが人は死んでた。でも、以降は完全に冬のほうが、死亡者数は多い。大きな死因の一つが、ヒートショックだ。」

 「寒い脱衣所や浴槽で、血管が収縮し、血圧が上昇。熱めの風呂にドボン。血管が拡がり、血圧低下。この急激な変化が、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす。」

 

  『正直不動産』榎本と永瀬の会話です。

 

 

 

  ♦何故、入浴中に毎年25,700人が亡くなるのか?

 

  ★浴槽内での溺死数:年間約6,700人

  ☆入浴中の急死者数:年間約19,000人

 

 浴槽内での溺死者を含めると、年間約25,700人が、入浴中に亡くなっている事になります。

 

 

 入浴中の死亡者の傾向を、下記に記載します。

 

  ①高齢者が大多数

  死亡者の9割以上が65歳以上であり、特に75歳以上の高齢者で増加が顕著である。
 
 
  ②男性の割合が高い
 
  どの年代でも、男性の死亡者数が女性よりも多い。
 
 
  ③冬季に多発
 
  11月から増え始め、1月にピークを迎える傾向がある。
 
  ④重症化しやすい
 
  1度事故が発生すると、救急搬送された人の9割以上が死亡または重症になる傾向がある。
 
 
 
 
 
  ☆ヒートショック:暖かい室内から寒い脱衣所や浴室への移動による、温度差によって血圧が急上昇・急降下し、脳卒中・心筋梗塞等を引き起こす。
 
  ★高温浴による意識障害:熱過ぎるお湯に長時間つかることで、体温が上昇し、意識を失ったり血圧が急降下したりして溺水に繋がる。
 
 
 
 入浴中の死亡に繋がる原因を大きく2つに分類すると、上記のようになります。
 
 ヒートショックは、入浴中の急死の原因です。
 
 意識障害は、溺死の原因です。
 
 
 
 
 
 
 「だから、逆兼好です。」
 
 「逆?」
 
 「冬のことをより考えたー断熱性に優れた家を造るべきなんです。まあ、それでも戸建てに関しては、まだマシなんですけどね。」
 
 
 「今年(2025年)4月に改正建築物省エネ法が、施工される。全ての新築住宅・非住宅が省エネ基準への適合義務の対象となり、適合しなければ着工できない。要は、高断熱でエネルギーを極力必要としない家じゃなきゃダメ。それでも欧米各国に比べれば、基準はまだまだ甘い。」
 
正直不動産・第64直 フラット35(後編) | ビッコミ(ビッグコミックス)
 
 
 「より問題なのは、賃貸物件だ。賃借人は、間取り・立地は気にするが、断熱性なんて気にしない。賃借人が気にしない以上、オーナーだって気にしない。だから、いつまでたっても改善されない。」
 
 「高齢化が進み、賃貸物件の断熱性はより大切になるのに。独居の老人が風呂場で孤独死。発見が遅れれば、事故物件確定だ。」
 
 
 「でもー重要性に気づいたオーナーが、断熱性に優れたマンションを建てようとしても、表面利回りだけ気にする銀行は、なかなかローン審査を通さない。」
 
 
  『正直不動産』永瀬と榎本の会話です。
 
 
 
 
 
 永瀬の言葉通り、物件を断熱性に優れた物を選択していく事も、入浴中の急死を減少させていく1つの方法です。
 
 しかし、断熱性の優れた物件に引越したり、建てたりする事は、すぐには出来ないものです。
 
 では、私達がすぐに出来る事には、どのような事があるでしょうか?
 
 
 
  

  ①脱衣所や浴室を暖める:入浴前に暖房設備を使用するなどして、室温との差を小さくする

  ②入浴時間を短くする:高温の湯に長時間つかることは避ける
 
  ③入浴前に一杯の水を飲む:血圧の急変動を抑える効果が期待出来る
 

  ④1人で入浴しない:家族や同居人に声を掛け、誰かがいる時に入浴する

  ⑤湯温を適切に管理する:必要に応じて、湯温計を使用し、40℃程度の湯温で入浴する
 
 
 
 これらに加え、高齢者以外の人の入浴中の急死に関わっているのが、アルコールです。
 
 アルコールを飲んだ日は、入浴をしない。
 
 これを徹底する事で、高齢者以外の人の入浴中の急死は、大抵防ぐ事が出来ます。
 
 
 
 これから冬が訪れ、入浴中の急死が増加する時期となります。
 
 あなた自身は勿論、あなたの親や祖父母等にも声を掛け、入浴中の急死という悲しい最期を回避していきましょう。