「別に。騒ぐほどのことじゃない。ただ飛信隊に移ると言ってるだけだ。」
「理由だけ聞かせろ。那貴。」
「飛信隊で食う飯ってうまいんスよね。意外と。」
『キングダム』那貴と桓騎の会話です。
行動に理由を添えるだけで、その行動は周りからの理解と譲歩を得やすくなります。
驚くべき事に、その理由が意味をなしているかどうかは重要ではありません。
「〇〇なので」というだけで、周りが勝手にその行動に、理解と譲歩を示してくれるのです。
この効果を「カチッサー効果」と言いますが、その効果を調べた実験がハーバード大学で行われています。
実験者は、図書館のコピー機の行列の1番前の人に対し、以下の3つの頼み方をして、どの頼み方が最も順番を譲って貰えるかを調べました。
①「すみません。5枚だけ先にコピーを取らせて貰えませんか?」
②「すみません。5枚だけ先にコピーを取らせて貰えませんか?急いでいるので。」
③「すみません。5枚だけコピーを取らせて貰えませんか?何枚かコピーを取りたいので。」
結果は、②③がほぼ同じ確率で順番を譲って貰える事が多いというものでした。
①が順番を譲って貰えない事と、②が順番を譲って貰える事は理解出来ます。
しかし、③が②と同じ程度、順番を譲って貰える事に、違和感を感じませんか?
③は、理由になっていないにも関わらず、ほとんどの人が順番を譲ってくれています。
コピー機の前で並んでいる人は、誰もがコピーを取ろうとしているのが当たり前であるのにも関わらず、このような結果となったのです。
たとえば、あなたが高速道路を車で運転している時に渋滞が生じた時に「渋滞10㎞」とだけ記されていたら、怒りや不安が生じる事でしょう。
しかし「ご迷惑をおかけします。道路工事してます。」という看板を見ると、その怒りや不安は少し落ち着くのではないでしょうか。
ただ冷静に考えてみれば、その看板は何も伝えていない事がわかります。高速道路で行われている工事といえば、道路工事以外にはないのですから。
それでも、理由がわかるだけで、私達の気持ちは落ち着くのです。
これに対し、私達は、理由がないものに、怒りや不安を感じるように出来ています。
この心理を活かし、その理由が少し意味不明でも、何かする時には理由をつける癖をつけていきましょう。
これは、周囲にあなたの行動への理解と譲歩を促すだけではなく、あなたの言葉や文章がより相手に伝わる事にも繋がります。