「これは何かな?乙骨憂太君。」
「ナイフ…だったものです。死のうとしました。でも、里香ちゃんに邪魔されました。」
「今日から新しい学校だよ?」
「行きません。」
「もう誰も傷つけたくありません。だからもう、外には出ません。」
「でも、一人は寂しいよ?君にかかった呪いは、使い方次第で人を助けることもできる。力の使い方を学びなさい。全てを投げ出すのは、それからでも遅くはないだろう。」
『呪術廻戦』五条と乙骨の会話です。
人は何故自殺をするのでしょうか?
今回は、SNSの誹謗中傷等の外部要因ではなく、自殺をする人の内部要因に注目したいと思います。
自殺学を専門にするエドウィン・シュナイドマンは、自殺に共通する10の特徴を挙げています。
それらを紐解くと、自殺の背景には「耐え難い精神的苦痛」「満たされない欲求」「絶望感と無力感」等の否定的感情が存在する事が理解出来ます。
そして、シュナイドマンの考えによれば、その否定的感情による苦痛が耐えがたい強度で持続し、逃げ出す事が出来ない状況へと至った時、人は心理的視野狭窄に陥り、困難な状況から逃げ出す唯一の方法として、自殺を考える事になります。
しかし、自殺を考えた人が、皆自殺をするという行動に移すわけではありません。
2021年日本財団が行った自殺意識調査では、日本人の全年代の24%が「本気で死にたいと考えた事がある」と答えました。
特に15~19歳・30代では32%、20代では31%と若い世代に「本気で死にたいと考えた事がある」と答えた人が多いという結果でした。
上記の事実から、自殺を考える事は、人にとって比較的ありふれた現象である事を示すとともに、自殺を考えた人の中で行動に移すのはごく一部に過ぎない事を示しています。
それでは、人は何故自殺をするのでしょうか?
日本国民の24%の人は、真剣に自殺を考えた事がありますが、その殆どの人は行動に移していません。
もちろん、将来への希望や期待が多少とも残されていたり、仕事上の責任や家族への配慮が歯止めになる事はあります。
しかし、本能的な部分で人に自殺を思いとどまらせるのは、死に対する恐怖や自分の身体を傷つける事に対する抵抗感です。
このように理論を展開させると、人が自殺行動を起こすには、自殺に対する心理的なハードルが下がるプロセスが必要であると考える事が出来ます。
つまり、自殺願望を行動に移すには、死に対する恐怖が減少したり、自分の身体を傷つける事への慣れや、身体的疼痛に対して鈍感になる等が、必要となります。
上記のような能力を「自殺潜在能力」と呼びます。
自殺願望に自殺潜在能力が加わった時に、人は自殺を行動に移します。
自殺の報道は数あれど、自殺に至る心理的プロセスを説明出来る人は、ほとんどいません。
これは言うなれば、敵を知らずに、人は苦労や裏切り・陰口が飛び交う社会に投げ出されるようなものです。
私は、自殺をなくすには、自殺に至る心理的プロセスを理解する事が必要であると考えています。