賢者は時を待ち、愚者は先を急ぐ2

 3年程前、ある地域包括支援センターに書類を郵送で送ったら「直接持ってきてください。」と言われました。理由を聞くと「皆そうしているから。」という返答でした。

 2年程前、書類の郵送を禁止している区役所に「郵送も可という事にして頂けると大変助かるのですが。」と伝えたら、断られました。理由を聞くと「個人情報の観点から。」と言われました。

 1年半程前、事業所や病院に「会議をオンラインでやりませんか?」と提案をしたら断わられました。理由を聞くと「設備がないから。」「やったことがないから。」という返答でした。

 2020年3月からのコロナウイルスにより、世の中の働き方が変わったことは、私にとっては追い風となりました。

 上記の地域包括支援センターや区役所も郵送を認め、頑なに出来ないと主張する事業所や病院等もいまだにありますが、オンラインを活用しての仕事も増えてきました。

 私の主張が通るようになったのは、私の主張が合理的であったからではありません。

 コロナウイルスというタイミングと重なったからです。

 

 私は、先延ばしは生産性の敵にはなるが、創造性の源になるのではないかという仮説を持っています。

 その理由は、歴史を振り返ると、優れた思想家や発明家には、先延ばし癖のある人が多いからです。

 

 レオナルド・ダヴィンチは、15年を費やして『最期の晩餐』のアイデアを練っています。さらに、そこから実際に絵を描き始めたのは、10年後です。

 多彩な才能で知られるダヴィンチは、絵画だけではなく、建築、音楽、数学、工学、解剖学等、様々な分野に手を出し、興味の赴くままに活動していました。

 球面を照らす研究をしていたことにより『モナリザ』に立体感を生み出すことが出来ました。

 ダヴィンチ自身、自分の先延ばし癖に苛立ちを感じることも多かったですが、急いてはオリジナリティを発揮することが出来ないことも、理解していました。

 「私には夢がある。」ゲティスバーグ演説で有名なキング牧師も、この歴史上最も有名な演説の原稿を、前日になってもまだ完成することが出来ていませんでした。

 また「私には夢がある。」という言葉は原稿に記していたものではなく、観衆の「夢を皆に伝えて。」という言葉に応えて出てきたものでした。

 このように即興で後世に残る言葉が出てきたことも、キング牧師が事前に原稿を完成させることなく、先延ばしにすることで、余白を残していたからであると思われます。

 

 アイデアを考える時、ひとまずそのアイデアを考えるという課題を脳の片隅に置きながら、他の仕事や勉強をしていくことをお勧めします。

 このようにしていくことで、既存の狭い世界とは異なるアイデアが生まれる可能性が上がることを、歴史が証明しています。