…組織というものは、年月を経るにつれ、次第に硬化し、腐敗していく…
…栄枯盛衰は、世の常であり、その理(ことわり)から、逃れられるものはない…
『天傍台閣』の一説です。
♦組織というものは、年月を経るにつて、次第に硬化し、腐敗していく
ここ最近、車の購入を検討し、ダイハツ・ホンダ等の大企業の販売店に足を運んでいます。
その中で、感じるのが、大企業の非合理的な交渉のやり方と融通の利かなさです。
「上の者に確認してきます。」
交渉のカードを出す度に、販売員は、上記の言葉を残し、10分程いなくなります。
これを何度も繰り返されると、2時間程度もの時間を、販売店で費やす事に、なってしまいます。
それであるのなら、最初から、上の者、裁量権のある者が同席し、否、裁量権のある者とだけ、交渉をしたいものです。
その方が、お互いに、時間の消費が少なく済み、合理的です。
トランプ関税の如何を問わず、このような組織は、栄枯盛衰していく事が「自然の理」であると、強く感じました。
幕末。
誰もが最も安泰と思ってきたある組織が、壊滅に向かっていました。
その組織こそが「江戸幕府」です。
若者が減り、給料の僅かな上げ幅以上に続く物価高騰。
これから、衰えていく事が、明らかな現在の日本で生きる私達にとって、絶対なくならないと思われてきた「江戸幕府」がなくなっていく過程を、学ぶ事は、大いに学ぶ所があります。
…天傍台閣という宿主に寄生するその虫は、欲望のままに血肉を喰らい、宿主の身体をひっそりとーだが、確実に蝕んでいる…
『天傍台閣』の一説です。
♦歴史は、勝者により作られる。そして、自分の功績を大きく語る人物により作られる
歴史は、勝者により作られる。
近年は、敗者の歴史も知られるようになり、歴史の見え方が、大きく変わってきています。
もう1つ。
自分の功績を、大きく表現する人により、歴史は作られる。
幕末の敗者側である江戸幕府でいうと、勝海舟・徳川慶喜あたりは、自分の功績を大きく表現する傾向があります。
その影響か「江戸無血開城」は、勝海舟の手柄であるかのように、後世に語り継がれています。
西郷隆盛も、後の世に、写真が1枚も残っていない事からも、自分の功績を大きく表現する人物ではない為、余計に、勝海舟の言葉が信じられ、勝の功績が後の世に語る継がれています。
しかし、勝海舟がした事は、最後の確認だけであり、実際に西郷隆盛と交渉をした人物は、他にいます。
その人物こそが、山岡鉄舟です。
山岡は、多くを語らない人物であった為、記録が殆ど残っていません。
その為、後の世に生きる人の中で、山岡鉄舟の事を知る人は、殆どいません。
そして、山岡と西郷が交渉をした場所も、江戸ではなく、駿府、現在の静岡です。
「いっそのこと‥皇室術理院に協力を要請するというのは、どうでしょうか?」
「流石にそれは‥後々のことを考えると、不味いでしょう。政治的な問題がでかすぎる。」
「そもそもあの皇室万歳の石頭共が、素直に応じるわけがない。」
「し、しかし」
「いい加減にしろ!!黙って聞いておれば、貴様には矜持(プライド)というものがないのか!?」
「なっならそのプライドとやらで、飯が食えますか?」
「結構。大いに結構。このまま議論を続けて、状況が好転するなら、思う存分やりたまえ。」
「‥‥。」
「満足したか?なら本題に入ろう。」
『天傍台閣』会議の一コマです。
♦腐敗していたのは組織であり、人が、腐敗していたわけではなかった
1人維新軍がいる中を、駿府城を訪れた山岡鉄舟。
通常であれば、敵の大将に会う事等、敵いませんが、ここが西郷の興味深い所。
山岡は、西郷に、会う事が出来ます。
西郷は、自身が整えた陣の中を山岡がどのように突破してきたのかを知りたいと思ったようです。
ここに、西郷の、軍人としての生き様が、あります。
1:江戸城を明け渡す事
2:兵器を引き渡す事
3:軍艦を引き渡す事
4:城の中の人を撤退させる事
5:徳川慶喜を他藩に渡し、謹慎させる事
この5つが、江戸を攻撃しない事に対する西郷の条件でした。
山岡は、西郷の要求を、断ります。
「立場を変えて考えて頂きたい。もしあなたの主君である島津が同じような事にあった場合、あなたは、すぐに主君を差し出す事が出来るか?」
西郷は、暫しの間、言葉を発する事なく、考えます。
「山岡殿の言う通り。」
西郷の言葉です。
山岡の要求を呑み、西郷は5:慶喜の他藩での謹慎をなしにする事に同意します。
山岡の交渉は「立場の逆転」を上手く使ったものです。
「もし、あなたが、私と同じ立場であったら、どのように考えますか?」
この交渉術は、非常に有効である為、あなたも、交渉の際に、是非使ってみてください。
西郷にとっても、5つの条件のうち、4つの条件を呑ませる事が出来れば、悪くない結果です。
交渉においては「負けを作らない」事が、重要です。
「負けを作らない」事で、後の反乱を防ぐ事が出来るとともに、後に味方をして貰う事も可能になります。
また、実は、西郷率いる維新側にも「お金」という問題がありました。
戦争には、金が掛かるもの。
維新側の幹部の本音も、戦争をしたくないというものだったのです。
事実、維新側は大阪の商人から、多額の借金をしています。
…あんな命も金も名もいらぬ人間は、しまつに困る…
…しかし、そのような人間でなければ、共に、天下を語ることはできない…
西郷の手記です。
…山岡鉄舟・勝海舟・渋沢栄一・山本覚馬…
腐敗していたのは組織であり、その中にいる人の中には、突出した人物がいたのです。
衰えていく国を救うのは、人物です。
人物を大切に育てていく。
そして、その人物を、きちんと評価していく。
これが、衰えていく日本が出来る事です。