「俺は、こんな物のために、金のために頑張ってきたわけじゃない。‥でも、たとえ夢の中でも、最期に君に会えて良かった。」
「最期?」
「俺は、マハトに負けた。実力の差を見せつけられた。この半世紀、研鑽を怠ったつもりはない。それでも、届かなかったんだ。」
「それがどうしたの?」
「今までだって、数え切れないほど負けてきたじゃない。それでも、諦めなかった。」
「あれは、指導試合だ。」
「最期まで、醜く足掻くんでしょ?少なくとも、私の見てきたデンケンは、そうだった。」
…そういえば、いつだったか一度だけ…
『葬送のフリーレン』デンケンの夢の中の物語です。
♦300年前、米の価格に挑み、敗北を重ねた将軍の物語
★1720年(享保5年) :70匁
★1730年(享保15年):30匁
現代は、1年間において、米の値段が、2倍になっています。
300年前の江戸時代では、10年間で、米の値段が、半額以下にまでなっていました。
そこで、吉宗は、江戸幕府が米の値段を決めるように、動きます。
吉宗は、江戸幕府の息の掛かった商人を、大阪に送ります。
そこで、大阪においても江戸幕府の息の掛かった「会所」を通さないと、米の取引が出来ないとしました。
これを破った場合や、世界で初めての先物取引である「帳合米」で取引をした者は死罪とするという決定もします。
さあ、市場(マーケット)に強く介入した吉宗政治の結果は、如何に?
「‥せめて相打ちくらいには、持ち込みたかったのだがな‥。」
…もう話すのだって、やっとのはず。それでも、まだ闘志は、消えていない…
「ですが、これでもう終わりです。」
「一体何が‥フリーレン。まさか本当に、ヴァイゼを‥。」
「‥初めて隙を見せたな‥。」
「高圧縮の人を殺す魔法(ゾルトラーク)‥馬鹿な‥油断したつもりはない‥。」
「‥これほどの威力を持つ魔法を持ちながら、何故今まで‥。」
「本当の切り札は、勝てると確信したときに使うもの‥かつて、お前が教えてくれたことだ‥師よ。これで相打ちだ。」
『葬送のフリーレン』デンケンとマハトの会話です。
♦勝利も敗北も知り、逃げ回って、涙を流して、男は一人前になる
吉宗の市場(マーケット)への強い介入は、失敗に終わります。
大阪の商人は強い反発をするとともに、強か(したたか)でした。
…お金を貸す代わりに、担保として米切手を取る…
各諸藩と上記のような取り決めをします。
これにより、米の取引をしているのではなく、担保として押さえているに過ぎないと主張をします。
大阪の商人は、江戸幕府の息の掛かった「会所」を通す事なく、直接諸藩と取引を始めたのです。
結果、大阪の商人が「会所」に集まる事はありませんでした。
吉宗が開いた「会所」は機能する事なく、1年で廃止となります。
次に、吉宗は、商人に一定数の米を買うように、命令をします。
しかし、商人は、吉宗の思うように、米を買いません。
現在の先物取引同様、投資をするには、一定のリスクが生じます。
江戸幕府の命令とはいえ、自身の資産が減少するリスクがある事を、そう簡単に実践する事は出来ません。
この吉宗の命令も、失敗に終わります。
…知らない感情のためなら‥共存のためなら‥報いを受けるためなら‥死んでもいいとさえ考えていた…
…なのに俺は、こうして自分の命惜しさに、無様に逃げ出している‥他の魔族と同じように…
…逃げる‥か…
「‥一体どこに?」
…魔力の流出が止まらない‥俺はもう助からない…
…なのに、この期に及んで、どこに逃げるというのだ…
「‥マハト。」
「‥こちらに。」
「その怪我は?」
「‥どうやら、私も報いを受けるときが来たようです‥。」
『葬送のフリーレン』マハトの脳内言葉と言葉、そして、グリュックとマハトの会話です。
♦昨日の敗者たち、今日のお前は何者だ?
★1720年(享保5年) :70匁
☆1730年(享保15年):30匁
★1732年(享保17年):79匁
1732年(享保17年)西日本に害虫が大量発生します。
これにより、1万人の餓死者が出る程に、今度は、米が足りない状態となります。
米が足りないという事は、米の価格が、上昇するという事です。
この事態を受け、吉宗は、決断します。
…つまるところ、米相場よろしく候…
吉宗は、大阪の商人が、市場(マーケット)において、自由に米の取引を行う事を、認めたのです。
また、失敗を重ねた吉宗は、米の価格を安定させる為に、米に直接アプローチする以外の、方法を選択します。
当時の貨幣に含まれる金・銀の量を減らす事で、貨幣の流通量を増やしたのです。
米の価格を安定させる為に、金融政策により、アプローチをしていく。
これらの政治の結果、翌年1733年(享保18年)には、米の価格は45匁に、落ち着きます。
これ以降、米の価格は、幕末まで、50匁~70匁の間で、安定します。
これにより、江戸幕府は継続し、江戸は当時世界一の街となりました。
失敗しても、敗北しても、いいのです。
寧ろ、失敗も、敗北も、挑戦者にしか得られない莫大な経験値です。
大切なのは、今日何をするかです。
「‥そうか。君もどうだ?」
「‥結局何も‥わからなかった‥。」
「‥すまない。君が探し求めている感情(もの)を見つけるまでー地獄の果てまで付き合うと約束したのにな。あの言葉は、私の本心だった。」
「‥存じております。」
「‥全く本当に諦めが悪い‥。」
「‥デンケンか。」
「‥それ以上近づくな‥近づけば、この男を殺す‥。」
「‥そうか。悪友(とも)よ‥君は、本当に助からないんだな‥。」
「‥頼むデンケン。もう楽にしてやってくれ。」
「悪友(とも)よ。楽しかったよ‥本当に、楽しかったんだ。」
『葬送のフリーレン』グリュックとマハトの最期の会話です。