「‥確かにー俺達は、新撰組は、最強だった。最盛期は、剛の薩摩も、狂の長州も、力で捻じ伏せた。だが、新撰組は二つに割れ殺し合い、薩長は一つになるべく手を組んだ。違う者を斬り捨て、異なる者を削ぎ落とし、最強を更に極めて残ったのは、ほんの一握り‥。」
「敗けるわな。そりゃあ。」
…最強だけでは、勝利は掴めない…
『るろうに剣心-北海道辺-』新撰組三番隊隊長斎藤一と新撰組二番隊隊長永倉新八の言葉です。
優しさは、遺伝すると思いますか?
小学校1年生の頃、TVで「人間に最も近い種」であるボノボの特集を観て、どこかとても怖い気持ちになった事を記憶しています。
ボノボは、チンパンジーと同じ属の別種で、人間に最も近縁な生き物の1つと言われています。ボノボには、次のような特徴があります。
☆争いを回避し、人間と会話する知能や相手を気づかう能力を持つ
☆メスがオスと同等以上の社会的地位についている
☆社会関係でメスがイニシアティブを握っている
上記のようなボノボの特徴は、チンパンジーは持ち併せていません。
あまり知られていませんが、チンパンジーは、とても凶暴な一面を持ちます。
争いで殺しが生じる事もありますし、共食いをする事もあります。
最も近い種であり、見た目もほぼ同じであるチンパンジーとボノボに、上記の様な違いが生じるのは何故でしょうか?
チンパンジーとボノボは、元々同じ種でした。
ここに生息していたジャングルに、コンゴ川が流れ込む事で、元々同じ種であった両者に、分離が生じます。
川を隔てて、両者は、その後、交流をしなくなった為、長い時間を掛けて、それぞれが独自の進化を遂げていきます。
チンパンジーは、コンゴ川の北側。
ボノボは、コンゴ川の南側。
チンパンジーが暮らした北側は、ゴリラ等食料を同じくするライバルが存在し、乾燥により食料も少ない土地でした。
これに対し、ボノボが暮らした南側は、ゴリラ等食料を同じくするライバルが存在せず、食料も豊富な土地でした。
チンパンジーが、生き残る為には、力が強く攻撃性が強いオスをリーダーにする必要がありました。
これにより、チンパンジーの子ども達に受け継がれる遺伝には、攻撃性の高さが、代々受け継がれていきました。
好む好まざるに限らず、チンパンジーの攻撃性の高さは、生き残る為の生存戦略なのです。
これに対し、ライバルが存在せず、食料が豊富な土地で暮らしたボノボには、争う理由がありませんでした。
その為、メスや子どもに優しいオスが、子孫を多く残すようになりました。
これにより、ボノボの子ども達に受け継がれる遺伝には、優しさが、代々受け継がれていきました。
好む好まざるに限らず、ボノボの優しさは、生き残る為の生存戦略なのです。
ボノボの優しさを示す、実験があります。
見知らないボノボ同士を、隣同士のゲージに来て貰い、一方のボノボだけに食料を与えたのです。
すると、ボノボは、驚くべき行動に出ます。
見知らないボノボにも食料を分け与えるべく、ゲージの扉を開け、食料のある自らのゲージに招き入れたのです。
これは、人にしか見られないような、見ず知らずの他者に優しくする事が、ボノボが出来る事を示しています。
親が、子どもにしてやれる最高のプレゼントとは、何でしょうか?
愛情を与える事・子どもとの時間を作る事・子どもの気持ちを受け止める事、これらが最も最高のプレゼントである事は、間違いありません。
しかし、これらは、数ケ月や数年、否、十数年掛けて提供し続けるべきプレゼントです。
わかりやすい形で、子どもが、産まれた瞬間から、出来る最高のプレゼントがあります。
それは、良い場所に暮らす事です。
チンパンジーとボノボの違いからも理解出来るように、暮らす場所により、受け継がれる遺伝も、大きく変化していきます。
優しさは、遺伝します。
ゴミが常に落ちており、争いが絶えず、暮らしている人の民度が低い場所で暮らしている子どもよりも、清潔で、争いではなく意見を交換し合い、暮らしている人の民度が高い場所で暮らしている子どもの方が、優しくなる事は想像に難くありません。
さらに、ボノボのように、そのような環境で暮らす事で、性差で人を判断する事はなくなり、争いを回避し、見ず知らずの人にも気遣いをする心を持つ事が出来ます。
そのような環境で育った者同士、若しくは、そうでない環境で育ったものの、勉強と努力と工夫でそのような環境で暮らす事が出来るようになった者同士が出逢い、次の世代にその遺伝子を遺していく。
この積み重ねにより、子育てがしやすい街・暮らしたい街が出来がっていきます。
これは、私の持論ですが、高い家賃には、優しさもプラスされています。
逆に、安い家賃には、優しさがマイナスされています。
優しさは、遺伝します。