「やっぱ変だよね。1人でフラフラしてんの。」
「‥ううん。変じゃないよ‥。」
「人といると‥やっぱり‥誰かといる時の自分になることが多いから‥私は、1人の時間‥自分が自分でいられる時間は、すごく大事。」
「‥‥俺んちね、母さん、すっごい俺に優しいの。父さんも、怒ってるとこほとんど見たことないし、弟も妹も‥俺に懐いてて‥けど、たまに思うんだよ。俺、いる?って。」

『氷の城壁』ヨータと小雪の会話です。
♦反抗期がなくなりつつある
近年の変化といえば「思春期の激しい反抗期」がなくなってきたという事があります。
親子関係を調査した研究では、思春期の親子関係が良好で親密になっているという結果が出ています。
「反抗期」には、親から心理的に自立するという意味があります。
「反抗期」がなくなる事に、問題はないのでしょうか?
この問いに対する見解は、意見が分かれています。
否、何とも言えないという答えが正解でしょうか?
ちなみに、私の持論は「問題がある」です。
親からの心理的自立で大切な事は、親子の関係が「縦の関係」から「横の関係」になる事です。
その過程で表出するのが「反抗期」ですが、親に激しく反抗する事なく「横の関係」を築く事が出来れば、それはそれで問題ありません。
否、現在の子育ては、子どもが乳幼児期にある時から、1人の人として関係を築いていく「横の関係」を築く事が、大切であると私は考えています。
「子どもは子ども」という「縦の関係」のみで、子育てをするのは、一昔前の子育ての世界観です。
勿論、子どもには「縦の関係」のように、親の支援が必要な時があります。
それでも、ベースは、子どもではなく、1人の人として関わっていくような「横の関係」であり、必要に応じて「縦の関係」にもなるという世界観が、現在の子育ての世界観であると考えています。
ただ、私は「反抗期」特有の親にしろ、学校にしろ、社会にしろ「とにかく気に入らない」という怒りは、思春期に経験するべきであると思います。
☆その怒りがあるから、何も出来ない無力な自分に気付き、変えよう行動出来る
★その怒りがあるから、学校以外の場所を探索し、学校が世界の全てでないと知る事が出来る
☆その怒りがあるから、漫画・アニメ・小説・映画等に触れ、なりたい自分を見つける事が出来る
心と脳が揺れ動く思春期に「反抗期」という怒りを経験するからこそ、上記のような、人生の指針を見つける事が出来るのです。
これが、私が「反抗期」が必要であると考える理由です。
「なんか、ずっと自分1人だけ家族の中で違う感じしてて‥みんな優しいのに、何の不自由もないのに、俺、ほんと贅沢なんだけど‥考え出すと止まらなくて‥ずっと逃げてんの。」
「‥‥ヨータ、思うことや考えることを、責めちゃ駄目だよ。」
…気持ちが、痛いほどわかる…
「何でこんなこと思ってしまうんだろう‥考えちゃうんだろうって‥自分を責めれば責めるほど、どんどん自分のこと嫌いになっていくでしょ‥?」
…環境から逃げたところで、自分からは、逃げられない…
「すごいね。こゆん‥お見通しだね。え、こゆん泣い‥。」
「あ、これは気にしないで。感情の整理が追いつかない時のバグみたいなもんだから。」
「???え?」

『氷の城壁』ヨータと小雪の会話、さらに、小雪の脳内言葉です。
♦反抗期がない事の弊害
思春期を迎えても「反抗期」がなく、思春期以降も親が子どもを守り、子どももその立場に甘えている状況(縦の関係)が続くと、いつか大きな問題を生じさせる可能性が高いです。
★大人になっても実家を出ず、心理的にも経済的にも、親から自立する事が出来ない
☆親子ともに離れられず、結婚は勿論、異性若しくは同性と付き合った事がない1度もない人生が続く
★仮に結婚しても親への依存が続き、子どもが生まれたとしても、子どもを支配しようとする
上記のような人が、あなたの周りにも、何人もいるのではないでしょうか?
「反抗期」を親との関係と考えた場合には、大切なのは反抗の有無ではなく、親子関係が「縦の関係」から「横の関係」へ変化出来ているかどうかです。
♦友達親子の落とし穴
親子が友達のように仲の良い「友達親子」にも、多くの問題点があります。
一見「横の関係」を築いていて問題のないようにみえますが、実は「友達親子」にも問題点があります。
「友達親子」には、2種類あります。
①成熟した大人同士の付き合いが出来ている場合
②親が子どもの所に降り、子ども同士の友達関係になっている場合
①の場合は、問題ありません。
問題なのは、②の場合です。
②の場合は、結局、子どもの心理的自立・経済的自立等に繋がりません。
「友達親子」が悪いわけではありませんが、互いの異質性を認め得るような成熟した関係性が、子どもが大人になってからの、親子関係には求められます。
特に「友達親子」は、母と娘で生じる事が多いです。
両者ともに、互いを必要としている為、両者ともに孤独を感じる事はなく、その為か、互いがその状況が「おかしい」と感じる事がありません。
また、母と息子の場合もあります。
これは、母と娘のように、いつも一緒にいるわけではありませんが、30代40代になっても、息子が実家で暮らしているようなケースです。
母は息子を心理的に必要とし、息子は母、若しくは母の先にいる祖父母を経済的に必要とします。
どちらの特徴も、親が、パートナーとの関係を、上手く構築出来ていない事にあります。
そこで出来た空白を埋めようと、母は、娘や息子に、依存します。
娘や息子も、その状態が楽である為、その状態に依存します。
このような娘や息子が自立する事が出来ないのは、当然と言えば当然です。
…性別も、体格も、性格も、全て私と違うヨータのことが羨ましくて、ヨータの優しさは、心の「強さ」や「余裕」からくるものだと思ってたけど、もし「我慢」や「諦め」から来るものだったら‥そんなの辛いだけだよ…
「ヨータ、良い人なんかじゃなくていいよ。だから、自分を責めないで。」
「はぁぁ~。ありがと、こゆん‥変な話してごめんね。」
「ううん。変じゃない。」
「ー‥こんな話、人にしたの初めて、ミナトとかが相手だったら、絶対言ってない。」
「ヨータって、雨宮くんのこと大好きだよね。」
「!全然?」
「そうですか。私で良かったら、いくらでも話聞く。罪悪感抱え続けるぐらいなら、吐き出した方が良いよ‥。」

『氷の城壁』小雪の脳内言葉と、小雪とヨータの会話です。
♦思春期に増える心の病
思春期・青年期は、精神医学的にも、非常に重要な時期です。
その理由は、様々な精神疾患を発症しやすい時期だからです。
この続きは、また後程。