いつかサッカーを辞めても、心に残るものー花より先に、根を育てるー




 ーー大人は時々、子どもを動かすことを教育だと思ってしまう。

 整列させる。静かにさせる。言うことを聞かせる。


 確かに、それは簡単だ。

 怖さを、使えばいい。




 怒られたくない。嫌われたくない。見放されたくない。

 その気持ちは、人を動かす。

 子どもも、大人も。


 けれど、動くことと、育つことは違う。




 風に揺れる草も、動いている。

 けれど、自分の意思で動いているわけではない。

 
 人も、同じだ。

 恐怖で動いている時、そこに主体性はない。そこに挑戦はない。そこに自由はないーー。






   ♦花より先に、根を育てる



 昨日、2~5歳の子ども達に、サッカーを教える機会がありました。

 上手く出来た事もあれば、上手く出来なかった事もありましたーー。



   ★思った以上に、指示は入らない

   ☆集まる子もいれば、離れる子もいる

   ★サッカーをやる子もいれば、違う事を始める子もいる



 ーーそんな時間の中で、改めて感じた事があります。


 それは、子どもに言う事を聞いて貰う事と、子どもを育てる事は同じではないという事です。





 子どもを動かす事は、実は難しくありません。

 怖さを使えばいいのですーー。



   ★大きな声を出す

   ☆強い口調で注意する

   ★「ちゃんとやりなさい」と言う



 ーーこれで多くの子どもは、大人の言う事に従うようになりますーー。



   ★静かになる

   ☆指示通りのことをやるようになる

   ★話を聞くようになる



 ーーだから、大人は錯覚します。「上手く指導が出来ている」「伝わっている」と。




 けれど、これは本当に伝わっているのでしょうか?

 その時、子どもの中で起きているのは、理解ではありません。気付きでもありません。


 ただ「怒られたくない」という気持ちだけなのかもしれません。







 ーー怖さは、すぐに結果を見せてくれる。

 だから、魅力的だ。


 けれど、怖さは心の扉を閉じてしまう。

 失敗を隠させる。本音を飲み込ませる。挑戦をやめさせる。




 一方で、信頼が結果に変わるのは、遅い。

 驚くほどに、遅い。


 待っても、変わらない日がある。

 伝えても、届かない日がある。

 見守っても、何も起きない日がある。


 それでも信頼は、見えない場所で少しずつ育っている。

 木の根のように。誰にも見えない土の中でーー。






  ー怖さは、早く育つ。信頼は、深く育つー



 怖さには、力があります。

 だから多くの大人が、無意識に頼ってしまいますーー。


   ★家庭でも

   ☆学校でも

   ★職場でも

   ☆スポーツでも


 ーー怖さには、即効性があります。しかし、即効性があるものと、本当に育つものは違います。




 怖さにより得られるものは、従順さです。

 けれど、人生で本当に必要なのは、従順さではありません。

 
 人生で本当に必要とされるのは、自分で考える力であり、自分で選ぶ力であり、自分で立ち上がる力です。




 では、その力はどこから生まれるのでしょうか?

 私は、信頼の中から生まれると思っていますーー。



  ☆失敗しても、大丈夫だった経験

  ★上手くできなくても、受け入れられた経験

  ☆やりたくない気持ちを、否定されなかった経験



 ーーその積み重ねが「もう1回やってみよう」という力になります。







 ーー子どもは、大人の言葉ではなく、大人との関係の中で、自分という存在を知っていく。



 木は、上へ伸びる前に、まず暗い土の中に根を伸ばす。


 誰にも、見えない場所へ。

 誰にも、褒められない場所へ。


 ただ静かに。ただ深く。





 人もまた、同じだと思う。

 
 安心という、土の中で。

 信頼という、水の中で。

 受け入れられたという、光の中で。


 人は、根を張るーー。






  ー人は、安心という土の中で根を張り、信頼という水を吸って育つー



 人は、どうすれば自分で考えられるようになるでしょうか?

 私は、その答えは「安全」にあると思っています。



 人は、安全な時にしか挑戦出来ません。これは、子どもも大人も同じですーー。



  ★失敗したら終わりだと思う場所で、人は挑戦できない

  ☆失敗したら見捨てられると思う場所で、人は本音を言えない

  ★失敗したら見捨てられると思う場所で、人は成長できない



 ーー挑戦とは、本来とても怖い行為ですーー。



  ★失敗するかも、しれない

  ☆笑われるかも、しれない

  ★成功する、保証はない



 ーーだから、人は挑戦する前に無意識に、確認していますーー。



  ★失敗しても、大丈夫だろうか

  ☆出来なくても、ここにいていいだろうか

  ★この人は、自分を見捨てないだろうか


 
 ーー子ども達は、大人が思う以上に、その問いを抱えています。

 そして、答えを探しています。

 言葉ではなく、大人の態度に。




 だから子どもは、教えられた内容よりも、教えた人の表情を覚えていますーー。



   ☆失敗した時の声

   ★出来なかった時の空気

   ☆急かされたのか、待って貰えたのか



 ーー子どもは、それらを記憶しています。

 そして、その記憶が自己肯定感に繋がります。



 自己肯定感とは「自分は、すごい」と思う事ではありません。

 自己肯定感とは「失敗しても、自分はここにいていい」と思える事です。






 ーー怖さは、すぐに花を咲かせる。

 けれど、すぐに散る。


 信頼は、中々花を咲かせない。

 けれど一度根を張れば、嵐の日も、雨の日も、その人を支え続ける。




 だから、私は思う。

 子どもに必要なのは、正しいことを知っている大人ではない。


 失敗しても、そこにいてくれる大人だ。

 出来ない時間を、急がずに待てる大人だ。


 そして、その記憶こそが、いつか子どもが1人で世界へ向かう時、見えない場所から支えてくれる根になるのだと思うーー。