そして、誰もケアマネをやらなくなった14

 

 

 

 

 机の上には、終わらない書類。

 

 電話の向こうには、不安と苦情。

 

 頭の中には、30人分の生活。

 

 

 

 相談を背負い、感情を受け止め、医療を繋ぎ、制度を回し、生活を支える。

 

 役割は多層化し、責任は個人化した。

 

 

 介護保険法は、ケアマネを中心に据えるだけで、ケアマネを支える構造は用意してこなかった。

 

 

 有効求人倍率10倍。

 

 これは、人手不足ではない。

 

 

 ケアマネ1人に背負わせ過ぎた結果が、数字になっただけである。

 

 

 

 

 

 

  ♦ケアマネが足りないのではない。ケアマネが続けられる構造が足りないのだ

 

 

 

 ケアマネが「すぐ辞める」有効求人倍率が10倍にもなっている背景は、単なる人手不足ではありません。

 

 複数の構造要因が、重なった結果です。

 

 

 

   3.仕事が出来る人程辞めていく構造

 

 

 私が、スーパービジョンやカウンセリングをしていて気づく事。

 

 若くて優秀な人程、ケアマネを辞めていく。

 

 ここを紐解いていきます。

 

 

 

 

  ♦頑張る程、損をする組織では頑張らない人が残り、頑張る人は去っていく

 

 

  ー責任は増えるが、報酬も給料も変わらない。その静かな不均衡が、人を遠ざけていくー

 

 

 

 ケアマネの世界では、仕事が出来る人の所に、難しいケースが集まります。

 

 

   ★家族不仲

 

   ☆独居

 

   ★ハラスメント

 

 

  能力が高い→難しいケースが集中→心が疲弊する

 

 

 

 仕事が出来る人程、仕事が増える。

 

 ここで、増えた仕事量だけ、給料という形で返ってくるのが、普通の仕事。

 

 けれど、ケアマネは違う。

 

 

 仕事が増えても、給料も評価も同じ。

 

 すると、心の中で「頑張る程、損」という状態という感覚が生まれます。

 

 

 人は「大変」よりも「不公平」に、強いストレスを感じます。

 

 

   ☆忙しい→耐えられる

 

   ★皆、忙しい→耐えられる

 

 

 でもー

 

 

   ★自分だけ忙しい

 

   ☆自分だけ責任が重い

 

 

 このように感じると、心理的怒りが生まれます。

 

 この怒りは、表面的に現れません。

 

 

 代わりにー

 

   ★やる気の低下

 

   ☆疲労感

 

   ★突然の離職

 

 

 ーとして現れます。

 

 

 

 

 

  責任だけが、静かに増えていく。

 

  困難な調整も、ハラスメントをする人への対応も、気付けば仕事が出来る人の机に集中する。

 

 

  誰かの生活を支えるという誇りは、終わりの見えない責任へと姿を変える。

 

  努力は評価ではなく、次の負担として戻ってくる。

 

 

  その時、心は気づき始める。

 

  ここでは、頑張ることが報われるのではないと。

 

  頑張れる人程、静かに削られるだけであると。

 

 

 

 

 

 

  ー努力が未来を変えないと知った時、人は自分の心を守る為に、静かに力を抜いていくー

 

 

 人は、無意識に「努力した分だけ、報われるはずだ」という期待を持っています。

 

 しかし、ケアマネの現場ではー

 

 

   ★利用者が増える

 

   ☆困難ケースが増える

 

   ★書類作成量が増える

 

   ☆責任が増える

 

 

 上記のように仕事が出来るケアマネが、仕事量を増やしてもーー給料は変わらない。

 

 

 この時、ケアマネの心では、努力ー報酬不均衡というストレスが生じます。

 

 これは「頑張る程、損をする」という感覚です。

 

 

 この状態が続くと、人は、仕事をする意味を失っていきます。

 

 

 

 

  ー努力は、人を壊さない。報われない努力だけが、人を静かに壊していくー

 

 

 ここが重要。

 

 仕事が出来る人程、この構造を理解します。

 

 

   ★仕事は、責任が重い

 

   ☆でも、給料は上がらない

 

   ★将来も、変わらない

 

 

 仕事が出来る人程、ケアマネの限界構造に気付きます。

 

 

 逆に言うと、現在仕事を継続しているケアマネの多くが、仕事が出来る人ではないと表現する事が出来るかも‥。

 

 

 

   ★気付く力がある人

 

   ☆客観視できる人

 

   ★複数の選択肢を考えられる人

 

 

 

 仕事が出来る人程、上記のような能力を持っています。

 

 そして「長くここにいる意味がない」と判断をします。

 

 

 

 

 

  ー能力とは、耐える力ではない。能力とは、離れる選択肢を持てる力であるー

 

 

 仕事が出来る人は、現在のケアマネ事業所に勤め続ける以外の選択肢を持つ事が出来ます。

 

 

   ★他事業所に転職できる

 

   ☆他業界に行くことができる

 

   ★独立ができる

 

 

 仕事が出来る人には、選択肢があります。

 

 

 

 これに対し、仕事が出来ない人には、選択肢がありません。

 

 これが、仕事が出来る人程、辞める構造の1つです。

 

 

 

 

 

  ー努力が罰になる組織では、やがて頑張らないことが最も合理的な行動になるー

 

 

 

 ケアマネとして働いていると「モチベーションの逆転」が生まれます。

 

 「モチベーションの逆転」とは、本来は「頑張る程、意欲が高まるはずの仕事」が「頑張る程、意欲が低くなる構造」の事です。

 

 

 心理学においては、人の行動は、行動→結果→次の行動という循環で決まるとされています。

 

 この循環を「強化理論」と呼びます。

 

 

 

 

   ♧通常の職場

 

    頑張る→評価される

 

       →給料・役職が上がる

 

 

 つまり、努力が強化される構造になっています。

 

 

 

   ♧ケアマネ

 

    頑張る→仕事が増えるだけで評価されない

 

       →仕事が増えるだけで給料が上がらない

 

       

 結果として、頑張る行動が罰になります。

 

 すると、人の脳は「頑張らない方がいい」と、学習します。

 

 

 これが「モチベーションの逆転」です。

 

 

 

 

 

 これらの構造が続くと、どうなるでしょうか?

 

 

  有能な人が辞める→残る人の能力が平均化し下がる→現場の負担が増える→さらに辞める

 

 

 

 これが、ケアマネの有効求人倍率10倍の本質です。

 

 

 ケアマネの離職の本質は、給料が低い事ではありません。

 

 ケアマネの離職の本質は、努力をしても未来が変わらないという構造にあります。