そして、誰もケアマネをやらなくなった13

 

 

 

 机の上には、終わらない書類。

 

 電話の向こうには、不安と苦情。

 

 頭の中には、30人分の生活。

 

 

 

 相談を背負い、感情を受け止め、医療を繋ぎ、制度を回し、生活を支える。

 

 役割は多層化し、責任は個人化した。

 

 

 介護保険法は、ケアマネを中心に据えるだけで、ケアマネを支える構造は用意してこなかった。

 

 

 有効求人倍率10倍。

 

 これは、人手不足ではない。

 

 

 ケアマネ1人に背負わせ過ぎた結果が、数字になっただけである。

 

 

 

 

  

  ♦ケアマネが足りないのではない。ケアマネが続けられる構造が足りないのだ

 

 

 

 ケアマネが「すぐ辞める」有効求人倍率が10倍にもなっている背景は、単なる人手不足ではありません。

 

 複数の構造要因が、重なった結果です。

 

 

 

   2.感情労働の過密

 

 

 感情労働とは、社会学者のアーリー・ホックシールドが提唱した定義です。

 

 「自分の感情を、仕事の為に調整・管理する労働」

 

 

 ケアマネは、まさに感情労働の典型の仕事です。

 

 

 

 

  ー他人の波を鎮めながら、自分の海だけが静かに荒れるー

 

 

 

 感情の抑圧は、我慢ではありません。

 

 感情の抑圧とは、もっと構造的で、静かに、しかし、確実に、あなた自身を苦しめる「感情の癌」のような存在です。

 

  ※抑圧:湧いた感情を感じる前に、処理してしまう事

 

 

 

  怒りが出る→「プロとしてダメ」と消す→なかった事にする

 

 

 ケアマネは、毎日、何度も上記のような、感情の抑圧のサイクルを繰り返します。

 

 

 そのような感情の中でも、ケアマネは、常に、中立・共感・冷静を演じ続けます。否、演じる事を求められます。

 

 

 

 

 

  ー怒りは、弱さではない。飲み込み続けた誠実さの総量であるー

 

 

 

   ①怒りの抑圧

 

 

    ★理不尽な要求

 

    ☆責任転嫁

 

    ★制度矛盾

 

 

 

 ケアマネは、本来は怒っていいような場面においても、中立である事を選びます。否、選ぶしかないという表現が、真実に近いでしょうか。

 

 怒りは、外には出ないが、心と体内に残り続けます。

 

 

 怒りを抑圧しても、怒りそのものは消えません。

 

 怒りは、形を変えて、必ず「感情の癌」として、あなたの心に出てきます。

 

 

 

 

 

   ♧慢性的なイライラ

 

 

   明確な原因はないのにー

 

    ★小さな事に過敏になる

 

    ☆相手の声・表情等に過剰に反応する

 

    ★家族・同僚にキツくなる

 

 

 

 本当の怒りは別の場所にあるのに、怒りが安全な場所に出てしまう。

 

 家族・同僚等、あなたが大切にしている場所に。

 

 

 

 

 

   ♧無気力感・虚無感

 

 

 怒りは、本来エネルギーです。

 

 あなたも、怒りをエネルギーに、努力をしたり、工夫をしたりといった経験があるはずです。

 

 しかし、怒りを封じ続けるとー

 

 

    ★何もしたくない

 

    ☆どうでもいい

 

    ★やる気が出ない

 

 

 ここが怖い所。

 

 怒りを止めていたつもりが、無意識のうちに、生きるエネルギーも止めているのです。

 

 

 

 

 

 

 飲み込んだ怒りが、胸の奥に沈殿していく。

 

 「大丈夫です。」と微笑むたびに、小さな棘が1つ増えていく。

 

 

 怒りは、消えたのではない。

 

 怒りは、静かに積もっただけ。

 

 

 そして、ある日、たって一滴の出来事で、堰(せき)が切れる。

 

 それは、今日の出来事ではない。

 

 

 抱え抑圧し続けた怒りの総量が、耐えきれなくなったのだ。

 

 

 

 

 

 

  ー爆発は、未熟ではない。限界まで他人を守ってきた人の、最後の合図であるー

 

 

   ♧突然の爆発

 

 

 普段は、冷静なあの人が、ある日突然強く怒る。

 

 

 怒りは、本来、感じる→表現する→解消するという循環の中で、消えていきます。

 

 しかし、ケアマネは、感じる→抑える→次に進むという循環の中で、怒りが残り続けます。

 

 

 

 未処理の怒りは、未処理の感情債務として、残り続けます。

 

 子どもの頃との親との愛着関係が、その後の他者との愛着にも強く影響をし続ける事と、同じ構造です。

 

 

 

 普段は、冷静なあの人が、突然強く怒る深層は、その日の出来事ではなく「溜まり続けた怒りの総量」なのです。

 

 

 

 

 

 

  ー外で壊れなかった人が、家で崩れる。それは弱さではない。限界まで守った証でもあるー

 

 

 

 ケアマネは、利用者には穏やかであり、家族にも丁寧であり、他事業所にも配慮をしている。

 

 会議では中立を守り、感情を表に出さず、どんな理不尽な言葉にも、1度受け止めてから返す。

 

 

 それが専門職の矜持であり、誇りでもある。

 

 

  しかしー

 

 

 家に帰ると、自分の家族に強くあたってしまうことがある。

 

 自分が最も大切にしている家族に。

 

 

 些細な一言に反応し、声が強くなり、後から自己嫌悪に包まれる。

 

 「外では上手く出来ているのに、何で家でこうなっちゃうんだろう?」

 

 

 そう自分を責める日々を繰り返しているケアマネは、少なくない。

 

 

 

 

 

 未処理の怒りは「感情の癌」として、あなたの心を、蝕み続けます。

 

 静かに、しかし、確実に浸食した「感情の癌」は、外では爆発しません。

 

 

 「感情の癌」が爆発するのは、あなたが、安全な場所と感じている場所です。

 

 しかし、これが続くと、あなたが安全であると感じている家庭が、崩壊してしまいます。

 

 

 

 これが、ケアマネの有効求人倍率が10倍になっている事のリアルです。