机の上には、終わらない書類。
電話の向こうには、不安と苦情。
頭の中には、30人分の生活。
相談を背負い、感情を受け止め、医療を繋ぎ、制度を回し、生活を支える。
役割は多層化し、責任は個人化した。
介護保険法は、ケアマネを中心に据えるだけで、ケアマネを支える構造は用意してこなかった。
有効求人倍率10倍。
これは、人手不足ではない。
ケアマネ1人に背負わせ過ぎた結果が、数字になっただけである。
♦ケアマネが足りないのではない。ケアマネが続けられる構造が足りないのだ
ケアマネが「すぐ辞める」有効求人倍率が10倍にもなっている背景は、単なる人手不足ではありません。
複数の構造要因が、重なった結果です。
2.感情労働の過密
感情労働とは、社会学者のアーリー・ホックシールドが提唱した定義です。
「自分の感情を、仕事の為に調整・管理する労働」
ケアマネは、まさに感情労働の典型の仕事です。
ー他人の波を鎮めながら、自分の海だけが静かに荒れるー
感情の抑圧は、我慢ではありません。
感情の抑圧とは、もっと構造的で、静かに、しかし、確実に、あなた自身を苦しめる「感情の癌」のような存在です。
※抑圧:湧いた感情を感じる前に、処理してしまう事
怒りが出る→「プロとしてダメ」と消す→なかった事にする
ケアマネは、毎日、何度も上記のような、感情の抑圧のサイクルを繰り返します。
そのような感情の中でも、ケアマネは、常に、中立・共感・冷静を演じ続けます。否、演じる事を求められます。
ー怒りは、弱さではない。飲み込み続けた誠実さの総量であるー
①怒りの抑圧
★理不尽な要求
☆責任転嫁
★制度矛盾
ケアマネは、本来は怒っていいような場面においても、中立である事を選びます。否、選ぶしかないという表現が、真実に近いでしょうか。
怒りは、外には出ないが、心と体内に残り続けます。
怒りを抑圧しても、怒りそのものは消えません。
怒りは、形を変えて、必ず「感情の癌」として、あなたの心に出てきます。
♧慢性的なイライラ
明確な原因はないのにー
★小さな事に過敏になる
☆相手の声・表情等に過剰に反応する
★家族・同僚にキツくなる
本当の怒りは別の場所にあるのに、怒りが安全な場所に出てしまう。
家族・同僚等、あなたが大切にしている場所に。
♧無気力感・虚無感
怒りは、本来エネルギーです。
あなたも、怒りをエネルギーに、努力をしたり、工夫をしたりといった経験があるはずです。
しかし、怒りを封じ続けるとー
★何もしたくない
☆どうでもいい
★やる気が出ない
ここが怖い所。
怒りを止めていたつもりが、無意識のうちに、生きるエネルギーも止めているのです。
飲み込んだ怒りが、胸の奥に沈殿していく。
「大丈夫です。」と微笑むたびに、小さな棘が1つ増えていく。
怒りは、消えたのではない。
怒りは、静かに積もっただけ。
そして、ある日、たって一滴の出来事で、堰(せき)が切れる。
それは、今日の出来事ではない。
抱え抑圧し続けた怒りの総量が、耐えきれなくなったのだ。
ー爆発は、未熟ではない。限界まで他人を守ってきた人の、最後の合図であるー
♧突然の爆発
普段は、冷静なあの人が、ある日突然強く怒る。
怒りは、本来、感じる→表現する→解消するという循環の中で、消えていきます。
しかし、ケアマネは、感じる→抑える→次に進むという循環の中で、怒りが残り続けます。
未処理の怒りは、未処理の感情債務として、残り続けます。
子どもの頃との親との愛着関係が、その後の他者との愛着にも強く影響をし続ける事と、同じ構造です。
普段は、冷静なあの人が、突然強く怒る深層は、その日の出来事ではなく「溜まり続けた怒りの総量」なのです。
ー外で壊れなかった人が、家で崩れる。それは弱さではない。限界まで守った証でもあるー
ケアマネは、利用者には穏やかであり、家族にも丁寧であり、他事業所にも配慮をしている。
会議では中立を守り、感情を表に出さず、どんな理不尽な言葉にも、1度受け止めてから返す。
それが専門職の矜持であり、誇りでもある。
しかしー
家に帰ると、自分の家族に強くあたってしまうことがある。
自分が最も大切にしている家族に。
些細な一言に反応し、声が強くなり、後から自己嫌悪に包まれる。
「外では上手く出来ているのに、何で家でこうなっちゃうんだろう?」
そう自分を責める日々を繰り返しているケアマネは、少なくない。
未処理の怒りは「感情の癌」として、あなたの心を、蝕み続けます。
静かに、しかし、確実に浸食した「感情の癌」は、外では爆発しません。
「感情の癌」が爆発するのは、あなたが、安全な場所と感じている場所です。
しかし、これが続くと、あなたが安全であると感じている家庭が、崩壊してしまいます。
これが、ケアマネの有効求人倍率が10倍になっている事のリアルです。