その痛みの続きを、誰かに生きさせるのかー傷つけられた経験は、誰かを傷つける理由になるのだろうかー






 ーーねえ。

 あなたが、悪い人になったわけではないのかもしれない。



 ただ、あの日のあなたが、まだそこにいるのかもしれない。

 誰にもわかってもらえなかった自分が、今度こそ傷つかないようにと、あなたの手を引いているのかもしれない。



 でもね。

 あなたが受けた痛みは、あなたが誰かを傷つけることでしか、証明できないものではない。



 あなたがわかってもらえなかったことは、誰かをわかろうとしない理由にはならない。

 そして、誰かを理解するために、あなた自身の痛みをなかったことにする必要もないーー。







  ーあなたが誰かを傷つけたことと、あなたが誰かを傷つけることの間には、まだ、選べる未来があるー




 あなたが、誰かに傷つけられた経験は、いつかあなたが誰かを傷つける時の、理由になってしまうのだろうかーー?



  ★間違いを、責められた事がある

  ☆話を、聞いて貰えなかった事がある

  ★自分自身まで、否定されたように感じた事がある



 ーーだから、もうあんな思いは、したくないと思ったーー。


  
 ★誰かに、一方的に決められたくない

 ☆話を聞いて貰えないまま、間違いだと判断されたくない

 ★自分が大切にしてきたものを、簡単に否定されたくない



 ーーだからこそ、誰かと向き合う時には、気をつけようと思った。



 


 相手の、話を聞こう。すぐに、答えを出さないようにしよう。

 その人が、そこに至るまでに、何を考えてきたのかを知ろう。


 自分がしてほしかった事を、今度は、自分が誰かにしてあげよう。

 そう思っていた、はずだった。





 けれど、傷ついた経験は、本当に私達を優しくするのだろうか?

 それとも、もう二度と傷つかないように、誰かとの間に、見えない壁を作っていくのだろうかーー?



  ★自分が聞いて貰えなかった声を、
   今度は、誰かの中に埋もれさせない為に

  ☆自分が失った関係を、
   今度は、失わないように



 ーー気づかないうちに、誰かと向き合う事よりも、傷つかずに済む事を優先するようになっていくのだろうか?





 人は、傷ついたからといって、必ずしも、誰かの痛みに気づけるようになるわけではありませんーー。



  ★自分が、どれほど苦しかったのか

  ☆自分が、どれほど理解してほしかったのか



 ーーその記憶が鮮明であるほど、同じ思いをしている誰かに、気づける事もあります。




 けれど、自分が受けた痛みを二度と味わいたくないと願うあまり、誰かの言葉を最後まで聞けなくなる事がある。




 責められているわけではないのに、責められているように感じる。

 間違いを指摘されただけなのに、自分の全てを否定されたように感じる。

 相手が何を伝えようとしているのかを考える前に、どうすれば自分を守れるのかを、考えてしまう。




 それは、弱さなのだろうか?

 それとも、もう二度と傷つきたいという、切実な願いなのだろうか?



 人は、自分を守ろうとする。

 それまでの経験が、そうする事を教えてきたのなら、なおさらだ。

 けれど、自分を守る為に身につけたものが、いつか、誰かを傷つけるものに変わってしまう事がある。








 ーーねえ。

 あなたが傷ついたことは、変わらない。



 あの日のあなたを、迎えに行くこともできない。

 それでも、あの日あなたが受け取ったものを、これから出会う誰かに、そのまま渡さずに生きていくことはできるのかもしれない。



 誰かにされたことを、誰かにすることでしか、乗り越えられないわけではない。

 誰かにわかってもらえなかったあなたが、いつか、誰かの言葉に耳を傾ける。



 誰かに大切にされなかったと感じたあなたが、誰かの大切なものを粗末にしない。

 それは、過去を許すことではない。



 あの日の痛みを、正しかったことにするものでもない。

 ただ、自分が受けた痛みの続きを、別の誰かに生きさせない、ということーー。








  ーあなたが傷ついた理由は、あなたの中に残っていい。けれど、その続きを、誰かに生きさせなくていいー

 


 自分が傷つけられた経験は、誰かを傷つけない為の、手掛かりにはなります。

 けれど、目の前の誰かを理解する為の、答えにはなりません。




 自分の痛みを知っている事と、誰かの痛みを理解する事は、同じではない。目の前の人がーー。



   ★何を、言おうとしているのか

   ☆何を、守ろうとしているのか

   ★何を、失いかけているのか



 ーーそれを知る前に、自分の過去から、相手の答えを決めてしまってはいないだろうか?


 


 自分の痛みを、誰かを裁く為の根拠にしない事。

 自分の経験を、誰かの気持ちを決めつける物差しにしない事。


 そして、もう1つ。

 自分が傷ついた事を、誰かを傷つけていい理由にしない事ーー。




   ★あの時、自分の話を聞いて貰えなかったから

   ☆あの時、自分の努力を認めて貰えなかったから

   ★あの時、自分ばかりが責められたから




 ーーだから今度は、自分が責める側に回っていいわけではない。

 だから今度は、自分が誰かの話を聞かなくてもいいわけではない。






 けれど、同じように。

 自分が受けた痛みまで、なかった事にしなくていい。

 誰かを守る為に、いつも自分を後回しにしなくてもいい。




 あなたが傷ついた事は、あなたが誰かを傷つけていい理由にはならない。

 けれど、あなたが傷ついた事を、忘れなければならない理由にもならないーー。



 ☆その痛みを抱えたままでも、誰かと向き合う事は出来る

 ★自分を守りながら、相手を理解しようとする事は出来る

 ☆間違いを許さなくても、その人の全てを否定しない事は出来る




 ーーそして、いつか。

 自分が受けた痛みを、別の誰かに渡さずに済んだ時。

 あの経験は、初めて、別の意味を持ち始めるかもしれない。





 傷つけられた事は、変わらない。

 けれど、傷つけられた自分が、別の誰かに出会う時。

 その人に、何を渡すのかは、まだ決まっていない。



 あなたが受けた痛みを、そのまま次の誰かに渡さなくてもいい。

 あなたがわかって貰えなかった苦しさを、誰かに思い知らせなくていい。

 

 あなたが誰かに傷つけられた経験は、いつかあなたが誰かを傷つける時の、理由になってしまうのだろうか?

 それとも、あなたは、そこで受け取った痛みを、次の誰かのせいにせず、生きていく事が出来るだろうか?