そして、誰もケアマネをやらなくなった26ー問題が起きた日だけが、仕事の全てになるのならー





 ーーねえ。

 誰も傷つかないように、あなたが選び続けた言葉の中に。



 あなた自身を守る言葉は、あったのだろうか?

 誰かの心を支えるために、差し出し続けたものの中に。



 あなた自身の心を、支えるものはあったのだろうか?

 何も、起きなかった。



 それは、何もなかったということではない。

 誰にも見えなかっただけで、確かにそこにあったものがある。



 そして今日も、何もなかった1日を作るために。

 誰かが、自分の痛みをしまい込んでいるーー。








  ー誰かと向き合う為に振り返っていたはずなのに、いつから、自分を責める為に振り返るようになったのだろう?ー




 いつから、間違えない事が、仕事の目的になったのだろうーー?



  ★誰かの、話を聞く

  ☆誰かの、生活を支える

  ★誰かにとって、何が必要なのかを考える



 ーーその為に、ケアマネになったはずだった。


 

 けれど、たった1つの間違いで、関係が壊れる経験を重ねる。

 すると、考えるようになるーー。



  ★あの説明で、良かったのだろうか

  ☆あの判断は、正しかったのだろうか

  ★今度こそ、自分の責任になるのではないだろうか



 ーーそれでも、次の仕事は始まる。





 言葉を、選ぶ。記録を、残す。何度も、確認する。

 間違えない、為に。誤解されない、為に。自分だけが、責められないように。



 勿論、これらは必要な事。

 けれど、ふと思う。



 私は今、目の前の人を見ているのだろうか?

 それとも、目の前の人との間に起きるかもしれない、問題を見ているのだろうか?



 傷ついた経験は、過去の出来事だけに留まりません。

 傷ついた経験は、まだ出会ってもいない誰かとの関係にまで、入り込んできます。



 今度は、間違えないように。今度は、傷つけないように。

 そう願うほど、言葉は慎重になる。そう願うほど、判断は慎重になる。



 人と向き合う前から、終わり方を考えるようになる。

 




 それでも、仕事は続いていくーー。


  
  ★誰かが困っていれば、話を聞く

  ☆誰かが不安を抱えていれば、一緒に考える



 ーー自分の中に、まだ整理出来ていない感情が残っていても、誰かを支える為に、自分の感情を後回しにする。

 それがいつの間にか、当たり前になっていくーー。



  ★間違えたら、振り返ればいい

  ☆至らなかったのなら、改善すればいい

  ★傷つけてしまったのなら、その事実と向き合えばいい



 ーーでも、何がいけなかったのかを、一緒に考える機会さえないまま。

 それでも自分だけは、答えを見つけなければならないのだろうか?


 だから、自分の間違いと向き合う事が、いつからか、自分自身を否定する事になっていく。

 間違いと向き合う事と、自分を罰し続ける事の間には、誰が、線を引いてくれるのだろう?








 ーーねえ。

 あなたが間違えたことと、あなたがこれまで大切にしてきたことは、本当に同じ1つのものだったのだろうか?



 今日も、明日も、仕事は続く。

 あなたはまた、誰かの話を聞くだろう。



 自分の中にまだ、答えの出ない問いを残しながら。

 それでも。



 あなたが今日まで、誰かのために考えてきた時間まで。

 なかったことに、しなくていいーー。




 


  ー誰にも気づかれなかった努力まで、誰にも知られかった痛みまで、なかったことにしなくていいー




 自分に出来る事を尽くしても、終わってしまう関係が、ある。

 その時、私達は、何をもって、自分の仕事を肯定すればいいのだろうーー?



   ★相手が、納得してくれたこと?

   ☆問題が、起きなかったこと?

   ★最後まで、関係が続いたこと?



 ーーもし、これらだけで、仕事を価値を決めるのなら。

 人と人との間に立つ仕事は、相手の気持ち1つで、それまでの全てを失ってしまうのだろうか?





 私は、そうは思いたくない。

 
 どれだけ考えても、答えが見つからない事がある。

 それでも、答えが見つからないという理由だけで、それまでの自分まで、否定したくはない。


 けれど、そう思いたくても、そう思えなくなってしまっている人が、いるーー。



   ★笑顔で

   ☆何も、なかったかのように

   ★いつも、通りに



 ーー誰も、気づかない。

 その人が、どれだけ自分を疑ってきたのか。

 どれだけ考えても答えが見つからず、それでも自分の対応を振り返っていたのか。




 
 何も、起きなかった今日も。

 何も起きないように、必死に働いていた人がいる。


 人を支える仕事をしていると、誰かを、傷つけない事ばかり考えるようになる。

 けれど、忘れてはいけない事がある。


 誰かを傷つけない為に、自分を傷つけなければならないのなら、その仕事は一体誰を守っているのだろうーー?



  ★誰かの、生活を守る為に

  ☆誰かの、不安を受け止める為に

  ★誰かの、明日を少しでも良いものにする為に



 ーーその為に働いてきた人が、いつか、自分の明日を信じられなくなる。

 私は、そんな事まで、仕事の責任にしなくていいと、思う。





 何も、起きなかった。

 誰も、傷ついていない事になっていた。


 けれど誰かの心の中では、何かが壊れかけていた。

 それでも、誰にも気づかれない。


 誰にも、知られない。

 そして、明日もまた、何もなかったかのように、誰かの生活を支える仕事が始まる。